氏  名:大毛利亮

題  目:CA法を用いた打音検査に関する基礎的研究

指導教員:宮木康幸

2012年に天井板が落下し,大きな事故を起こした笹子トンネルを始め,多くの構造物の老朽化が進んでいるのが現状である.定期的な点検・検査の重要性が問われる中で,本研究では扱われている検査のうちの一つとして挙げられる打音検査に注目し,その有用性を,CAプログラムを用いて検討することを目的としている.
 打音検査は,検査部位をハンマーで打撃し,対象物内部に振動が伝わって各表面に達し,エネルギーとして出力され,空気中を介して受音点に達するのが原理である.しかし本研究で用いたCAプログラムは,検査対象物の表面からエネルギーが出力された後,受音点に達するめでの移動に関して対応していないため,打音検査の原理に適っていない.そこで本研究では,直方体の供試体モデルを15×40×15セルで設定し,ある一つのセルに注目して,その経過時間に対する圧力変動を欠陥の有無で比較した.欠陥の有無で差異が認められれば,打音検査の有用性が評価できると考えた.
 解析に当り,境界条件を設定する.欠陥部分とモデル周辺の境界を完全透過,完全反射の条件を持つセルで表現する.まず完全透過のセルを用いたところ,急激な減衰性がみられ,実際に行った打音実験の結果から得られた音圧特性の減衰性に関する特徴を捉えられていないため適当でないと判断された.次に完全反射のセルを用いたところ,減衰性がほとんど確認されなかったため,これも適当でない.そこで,完全反射のセルに,1%のエネルギーを透過,99%を反射する,という条件を加えて設定したところ,打音実験の実測値と同等の減衰性を持った圧力変動の挙動を示した.故に,前述の境界条件を用いて解析を行った.
 モデルへの欠陥の設置は,形や大きさを変えて4パターン行った.欠陥なしの場合と比較したところ,セル1つ分の欠陥を設けた際には大きな変化は見られなかったが,セル4つ分以上の欠陥を設置した場合では,初期の圧力値や減衰性の大きさに変化が見られた.また,表面全体の喧嘩時間に対する圧力変動にも,所々相違点が見られた.しかし,FFT解析を行い,周波数として比較したところ,実測値と全く違う挙動を示し,また欠陥の有無による変化も,僅かながら確認されたが,明確な関連性が不明であった.
 結論として,圧力変動に関しては,欠陥の有無を比較する際に,音圧特性の実測値と同等の比較が行えることがわかり,その点は打音検査の有用性が確認されたといえる.研究の課題としては,CAプログラムを改良し,打音検査の原理に完全に対応する条件を加えることと,健全な供試体,既知欠陥を持つ供試体の実測値のデータを得る,といった点が挙げられる

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