ken11205

田村拓也

地震による構造物基礎周辺地盤の沈下に及ぼす杭の打設効果に関する検討

大塚悟　磯部公一

新潟県長岡市にある大河津分水旧可動堰は施設の老朽化により，新可動堰の建設と伴に撤去工事が実施された．この際，旧可動堰底部に連続した空洞が発生していることが確認された．この空洞が生じた原因として，地下水による浸食と液状化による周辺地盤の沈下の2つが挙げられる．液状化によって基礎周辺地盤が沈下すると，たとえ杭基礎が健全であったとしても，堰直下に空洞が生じ，杭が突出した状態となり，水平耐力を損なう可能性がある．このような背景を踏まえ，本研究では液状化による堰直下の空洞化の可能性に着目し，堰・杭が打設された現地地盤を想定した振動台模型実験および数値解析を行った．模型実験では，堰・杭の有無，杭本数による周辺地盤の挙動への影響について基礎的検討をし，数値解析では模型実験との比較によりその有用性を示し，より詳細な検討を行った．その結果，以下に示す知見が得られた．①振動台模型実験では，地震による周辺地盤の沈下によって基礎下に空洞化を生じる可能性があることが確認できた．また，杭の打設によって杭間で発生する過剰間隙水圧の上昇を抑制することがわかった．これは，杭によって杭間地盤のせん断変形への抵抗力が大きくなる（剛性低下しにくくなる）ことに起因することが応答加速度との対応関係より明らかとなった．杭の打設効果は堰を設置した場合の方が大きくなったことから，杭に作用する重量が影響していることがわかった．このように，模型実験では現象の定性的な傾向について把握することができた．②数値解析では，模型実験で得られた結果を解析でどこまで再現できるか確認し，その有用性について検証した．その上で，模型実験で詳細な検討まで至らなかった沈下量や杭の水平変位に関する詳細な検討を行った．結果，杭の打設本数が多いほど過剰間隙水圧が上昇しにくくなり，堰沈下量および周辺地盤の沈下が抑制されることがわかった．また，数値解析では模型実験では検討しなかった杭剛性を変化させた場合についても検討したとこと，杭剛性を実験で用いたアルミニウム杭の剛性の1/10まで低下させると消散過程で堰の沈下量が大きくなることがわかった．また，模型実験と同様に堰荷重が杭に作用する場合のほうが打設による違いが数値解析でも見られたことから，上部構造物による慣性力が杭の打設効果を評価する上で重要だということがわかった．

前のページに戻るには"戻るボタン"で戻ってください。