ken11204

関　孝文

7・13新潟福島水害の事例解析による広域斜面危険度予測手法の基礎的研究

大塚　悟　磯部　公一

　国土のおよそ7割程度を山間部が占める日本では，多くの斜面が存在している．そのため大雨や地震などの自然災害によって，全国各地で頻繁に地すべりは発生している．特に豪雨によって発生する地すべりについては，規模が大きく被害も甚大なものが多く人命に大きく関わってくる．以上のことを踏まえ，災害に対する地域の危険度を総合的に予測しておくことは，地域の防災対策計画や災害復興計画をより計画的に進めるうえで重要である．近年では集中豪雨による斜面被害データの整備も進められ，地理情報を利用した詳細な分析が可能となった．
このような背景を踏まえると，集中豪雨から得られた被災データを蓄積しておくことは非常に有用であると考えられる．そこで本研究では，新潟・福島7.13水害によって得られた諸データをGISで整備を行い，データベースの構築を行った．また，データベースをもとに，降雨が地すべり被害に与える影響及び土地の形状や地質種類との相関関係について発生率による分析を行い，中間山地及び海岸平野における各特性による被害の受けやすさを明らかにした．さらに分析より得られた傾向をもとに斜面の地すべり危険度評価モデルの構築を行った．
発生率を用いた統計分析では，中山間地及び海岸平野で発生した地滑り被害の傾向が異なることが明らかとなった．中山間地で発生した地滑りは，土壌雨量指数の高い地域において発生率の高い傾向であり，その他の地域特性において発生率に差異は見られなかった．海岸平野で発生した地すべりは，急傾斜地形，地質種類ではシルト質泥岩，植生では広葉樹林，土壌雨量指数の高い地域において発生率の高い傾向が見られた．地域特性における発生率の差異が見られた海岸平野における地すべりに対して，多変量解析を用いて各地域特性が地すべりに与える影響度，地すべり危険度の算出を行った．数量化理論Ⅱ類を用いた分析より，カテゴリスコアのレンジから判断すると傾斜角度，地質種類，土壌雨量指数，60分間積算雨量の順に影響度が高い結果となった．数量化理論Ⅱ類の分析結果より，地すべりに与える影響度の高い量的な要因の3項目を用いて重回帰分析を行い，発生率を用いた統計分析より得られた関数と合わせて危険度の評価を行った．数量化理論Ⅱ類，重回帰分析を用いた危険度評価を比較すると，数量化理論Ⅱ類での危険度評価の方が実被害との相関性が高い結果となった．

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