木野健太
土地利用コントロールを視点とした景観法の運用に関する研究
中出文平 樋口秀 松川寿也
現在、わが国では都市部周辺で無秩序な土地開発が進行している。特に都市計画区域外では土地利用規制が極端に緩いため、開発が進行しがちである。これに対し、都市計画区域の指定、拡大等が可能な区域であれば、開発行為に対し有効な手段であるといえるが、都市計画区域の指定要件を満たさない区域、あるいは指定要件を満たしている場合でも接道要件等、集団規定により都市計画区域の指定が困難な区域であった場合、都市計画区域の指定による土地利用コントロールは難しい。
上述したような都市計画区域の指定が難しい、もしくは非線引き白地のような規制の緩い区域に対し、景観法による景観計画区域内での景観形成基準等を用いて土地利用コントロールを行う手法が考えられる。よって本研究では、都市計画区域外及び非線引き白地地域における景観計画の運用実態と、土地利用コントロールを目的とした手法を検討する。
本研究では、まず平成24年5月1日時点に策定されている346の景観計画で指定されている景観計画区域及び重点区域と都市計画区域の指定状況を把握した。中でも景観計画区域内に非線引き都市計画区域白地地域、都市計画区域外を持つ241計画を主な対象としてアンケートを実施し景観計画策定時の意向、各景観計画に定められている景観形成行為届出及び景観形成基準を把握した。景観計画に土地利用コントロールの意向を持ち、景観形成行為届出及び景観形成基準に定量的基準を持っている計画から、主に重点区域の運用に関する詳細対象都市として勝山市、武雄市、萩市の3都市を抽出し、景観計画区域全域での景観計画の運用に関する詳細都市として千曲市を抽出し、調査した。
重点区域内では、景観計画に基づいて届出された建築行為と個別五法に基づく開発行為、建築確認申請の実績を空間化して比較した。景観計画区域全域では、景観計画の中でも「開発行為」及び「土地の形質の変更」に係る届出を空間化し、土地利用の変化に対し景観計画に基づく届出がどのような効果を持っているかを調査した。
各対象都市で運用されている重点区域を調査したところ、上記緩規制地域等の開発行為及び建築行為が旺盛でない地域で、土地利用現況及び建築物の現況に即した規制を設けることで、建築行為の把握及び誘導が可能であった。また、景観計画区域全域でも建築行為の伴わない土地の形質の変更等、都市計画法では把握できない土地利用面の変化を把握できる。しかし、土地利用が一様でない場合や、区域内環境が良好でない場合、住民合意が得られない場合等には建築行為の誘導が行えない。また、開発行為及び土地の形質の変更の行為自体を禁止できない等の課題が残った。
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