安藤 拓馬

地方都市中心部の高齢者のみ世帯の動向に関する研究

樋口 秀 中出 文平 松川 寿也

持家志向が高い地方都市の中心部では、人口減少と高齢化が進行し居住継承が難しくなっている。跡継ぎとなるべき世代が世帯分離し、新たな居住地で世帯を形成しているためである。長岡市中心部では、高齢者のみで暮らしている世帯(高齢世帯)が多く、平成22年の国勢調査では、180地区中94地区が高齢世帯率20%以上に達した。その多くの世帯は持地持家で暮らしており、居住継承が行われないと、現居住者が没後に土地・住宅が駐車場・空地、老朽化した空家へと変化し、中心市街地の衰退に拍車をかける。
2001年の既往研究によれば、長岡市中心部の高齢持家世帯の割合が高い4地区(中島4丁目、四郎丸4丁目、弓町2丁目、春日1丁目)では、高齢者のみ世帯が約3割に達し、転出者が返ってこない可能性は50%に上っていた。これらの土地は駐車場・空地、空家化する可能性があり、市街地に及ぼす影響が大きいと指摘している。
本研究では、この4地区の当時の高齢者のみ世帯を対象とし、その後の世帯の変化を調査分析し、高齢者のみ世帯が地方都市中心部に及ぼす影響を明らかにする。
まず4地区について、前調査以降の10年間での土地利用変化、世帯変化を現地調査した。そして、高齢者のみ世帯が所有する不動産の実態を明らかにするために土地登記簿128筆、建物登記簿108筆を取得し、土地・建物の詳細な不動産状況と権利関係を明らかにした。
次に、居住者にヒアリングを実施し、生活実態、跡継ぎ、この10年間の生活面の変化を把握した。その結果、今後の居住継承の意向を調査した38世帯中7世帯は有るものの、残りの31世帯(82%)は難しいとの回答を得た。また、2001年から現在までに実家に戻り、同居・2世帯化した7世帯にヒアリングを実施し、戻ってくるための条件、生活面の変化を把握した。
最後に、実家から離れて暮らす子供の相続の意向が重要だと判断し、対象者にアンケート調査を実施した。23世帯から調査協力を頂き、17世帯22人から回答を得た。相続して居住すると回答したのは5世帯で、駐車場・空地、空家化する恐れが大きいのは4世帯である。相続して誰かに貸したい・売却したいと答えたのは2世帯、相続しないと答えたのは5世帯、その他で未定と答えたのは5世帯である。
以上のことから、長岡市中心部での高齢者のみ世帯の影響から地方都市中心部で及ぼす影響と今後の在り方を提言した。

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