レ・ヴァン・タオ

ICカードデータを用いた公共交通利用者の滞在時間に関する研究

佐野可寸志,西内裕晶

現在,日本では人口減少,少子高齢化,モータリゼーションの発展,ライフスタイル多様化などの社会情勢変化により大型ショッピングセンターの郊外流出,中心市街地店舗の後継者不足などの問題がある.そのため,かつて各中心市街地の賑わいがなくなっている.そこで,中心市街地に来訪する利用者の滞在時間が長くなれば買い物金額が高くなると考えられ,中心市街地の活性化につながると思う.そこで,本研究では平成22年1月に高知市の各バス・路面電車会社に導入されたICカード「ですか」を用いた公共交通利用者の滞在時間について研究を行う.具体的にはバス/電停に関して,来訪者の個人特性やGIS上から得られたバス/電停周辺の地理的特性を組み組んだ滞在時間モデルを構築し,どのようなバス/電停において利用者が,どの程度時間滞在しうるのかを考察する.また,構築した滞在時間モデルを用いて,どのような要因が市街地来訪者の滞在時間に影響を与えるかを調べることを目的とする.
本研究の対象とした自由トリップであるため,ICカード「ですか」の利用履歴データから土日に2トリップ出現した利用者の内,起点終点が同じ,又は1トリップ目の起点と2トリップ目の終点が一致するトリップを抽出する.更に,自由トリップを対象とするため,抽出したデータから平日と同じ移動パターンのトリップデータを除いた.上記の定義により収集されたデータを用いて,各バス/電停ごとに滞在時間を集計する. また,各バス/電停では一日に1トリップを利用するとし,休日の8日分に相当する8トリップ以下を持っているバス/電停は対象としなかった.その結果,対象としたバス/電停の数は市全体では86か所,中心市街地では22か所である.(中心市街地は本活性化基本計画の区域により定められた).さらに,観光地や公共施設などの地理特性データは国土数値情報を用いて,GIS上で処理し,得られた.また,メッシュコードにより集計した商業施設に関するデータを用いて,各バス/電停の半径500mの周辺における飲食や買い物等の商業施設に関するデータを収集された.そのデータを用いて,重回帰分析を行い,中心市街地にある各バス/電停における平均滞在時間に影響を与える要因が明らかにした.その結果,高齢利用者割合,郊外からの来訪者割合,2回以上来訪する利用者割合,各バス/電停の周辺における観光地数,福祉施設の数,飲食に関する店舗数,衣服に関する店舗数は各バス/電停における平均滞在時間に影響を与える要因であることが分かった.今後,中心市街地に来訪者が来訪する時間と商業関係事業所数の売り場面積や床面積などのデータを用いて,平均滞在時間への影響を考慮するべきだと考える

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