中丸翔太

中山間地における移動販売事業の運営実態と利用者特性

佐野可寸志 准教授

本実験の背景と目的として,人々にとって買い物は,日常生活を送っていく上で,必要不可欠なものである.しかし近代の日本では,それが満足に行うことができない「買い物弱者」と呼ばれる人が増加している.そこで,私は本研究にて買い物弱者対策である移動販売事業に着目し,事業者に対するヒアリング調査と,移動販売利用者に対するアンケート調査を行った.本研究では,この調査結果を用いて,「移動販売事業の運営実態」と「利用者特性」を明らかにすることを目的とする.
そこで,買い物弱者支援事業者へのヒアリング調査と移動販売利用者へのアンケート調査を実施した.ヒアリング調査は,移動販売を行っている10事業者に対して行った.およそ20分程度のヒアリング調査である.内,半分の5事業者が黒字経営であった.その要因として,まず「原価」が挙げられる.黒字事業者の内3事業者が利益率を30%以上で行っているのに対し,赤字事業者で30%以上は1事業者しかいない.次に,「人件費」である.黒字事業者と赤字事業者では,人件費の平均に約50万円の差があった.
アンケート調査は,移動販売を利用している人を対象として,調査を行った.内容は,年齢,家族構成,自転車の運転等の利用者属性や最寄り店舗への距離,普段の買い物等の利用者の生活,利用頻度,自宅から移動販売車までの距離,改善してほしいこと,平均購入金額等利用状況となっている.
そして,アンケート調査結果を用いて判別分析と重回帰分析を行った.
まず,重回帰分析の結果から,世帯数が多いほど,自宅から移動販売車への距離が近いほど,自身で運転しない人ほど,移動販売での購入金額が増加するという結果を得た.
そして,判別分析の結果から,年齢は高いほど,男性の方が,世帯構成が多いほど,最寄り店舗への距離が遠いほど,改善要望が少ないということがわかった.
本研究より,事業者の運営実態と利用者特性を把握することができた.運営実態は,赤字経営ばかりでなく,黒字としている事業もいくつかあった. 利用者特性として,移動販売への依存度は高く,利用者の約8割は現状の移動販売で満足しているという結果になった.さらに本調査から,移動販売車を利用者の自宅の近くに停車することが重要であることがわかった.それは,自宅が近いほど購入金額が増加し,売り上げが上がり,事業を継続し続けることが可能になる.

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