バダムドルジ・オンドラッハ
 
ウランバートル市での新交通システムの路線網の評価
 
佐野可寸志 西内裕明
 
 モンゴル国の首都ウランバートルは,1961年以降から人口の増加が顕著で,2013年現在では国民総人口の46%の132万人が全国面積の1%にも満たないUB市に居住している.また,都市中心部の道路交通量も最近10年間で2倍近く増加し,平均旅行速度は40[km/h]から25[km/h]に低下し,慢性的な渋滞が日常化している.UB市はこの対策案として新交通システムの導入を計画している.その内容は,幹線道路でのBRT(バス専用レーンによる中量輸送システム,2018年実施)の設置並びに中心コリドーのPeace Avenue沿いにMRT(高架鉄及び地下鉄による大量輸送システム,2047年開通)を新設する計画となっている.しかし,それらの事業は既存バスやBRTの路線網別の評価はされていない.そこで本研究は,路線網別にシナリオを5つ作成し,それぞれの道路交通流に与える影響をミクロ交通シミュレーションにより比較評価を行う事を目的とした.評価方法は,ミクロ交通シミュレーションを用いてUB市の交通現象をPC内で再現し,バス専用レーンを導入した際,バスやその他の車両の所要時間と旅行速度の変化により評価することで,新交通システムの導入が道路交通流に与える影響を確認する. 
 交通シミュレーションの研究方法は3段階から構成されている.まず,個人ベースの非集計交通機関選択モデルから集団ベースのOD間集計交通機関分担モデルを推計する.次に,2007年のパーソントリップデータを用いて,2011年現在の交通機関別OD交通量を推定し,その現況再現を2011年に行われた「交差点方向別分岐交通量」の調査データと比較し,基本ネットワークの確定を行う.最後に,シナリオ別に集計モデルで得られた初期OD交通量をシミュレーション結果よりフィードバックし,収束したシナリオ別配分結果を比較する事で最良のシナリオ選定を行う.
 推定結果を述べる.まず,2011年ベースの現況確認用シミュレーション結果ではネットワーク全体の交差点方向別分岐交通量は実際の値より32%低くなった.よって2007年に乗用車の平均乗車人数は2.5人を2人とした.次に,シナリオ別の収束配分結果を見ると,UB市が計画するシナリオの結果より,本研究で提案した路線バスのフィーダー化及び新設道路区間を考慮した延長BRT路線のシナリオが良好な結果である事が確認できた.また,中心コリドーPeace Avenueでの平均所要時間の比較結果では,何も政策ない基本シナリオより本研究で提案したシナリオ群が最大で16.7%も短縮できる事が分かった.以上から,既存のバス路線の再編及びBRT路線の工夫により,MRTの導入ない想定でも,十分に渋滞緩和ができる事が分かった.

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