森重翔太

自転車利用者の駐輪行動特性と歩行者の効用を考慮した路上駐輪撤去活動の評価に関する研究―大阪市をケーススタディとして―

佐野可寸志,西内裕晶

本研究は,路上駐輪が問題となっている大阪市を対象に,撤去活動の頻度の強化に必要な総費用と,住民の持つ環境価値を比較することで,撤去活動の頻度を強化する可能性を探ることを目的とする.
撤去活動の頻度を厳しくすることで路上駐輪数の減少が見込まれる.しかし,撤去活動の頻度を厳しくすると,撤去活動の実施に要する費用や,撤去された自転車を受け取らない駐輪者が増加し,自治体の支出は大きくなる.したがって,撤去活動の頻度を強化するには,強化に要する費用に対して十分な路上駐輪の減少効果が得られるかを分析し,その合理性を判断する必要がある.
本研究では,撤去活動の頻度の強化に要する費用を分析するために,駐輪場および路上駐輪者に対するアンケート調査を通じて,撤去された自転車を受け取る際にその駐輪者が支払う保管料の支払意志額モデルと駐輪場所選択モデルを構築する.また,路上駐輪の撤去活動の頻度の強化による環境改善効果の価値を把握するために,各駅周辺の歩行者や住民にアンケートを実施し,撤去活動の頻度の強化に対して,税金としていくらまで支払ってもよいかを示す負担金支払意志額を算出する.
大阪市の鉄道駅4駅(九条駅,大正駅,四ツ橋駅,西大橋駅)において駐輪場利用者と路上駐輪者にアンケートを行い,その結果から撤去活動の頻度が強化された場合の保管料支払意志額モデルと,駐輪場所選択モデルを構築した.その結果,駐輪環境の整備状況に不満を感じている人ほど,保管料の支払意志額が低く,路上駐輪を実施するという傾向があった.
また,道駅周辺の歩行者にアンケート調査を実施した.この調査は,路上駐輪の減少効果に対する適切な環境価値を把握するために,撤去活動の頻度ごとの路上駐輪数の減少効果を回答者に示した上で,撤去活動の頻度の強化に対する負担金の支払意志を調査するものである.調査結果をもとに負担金支払意志決定モデルを構築した.その結果,路上駐輪対策に満足していない住民や,駅前の通行頻度が高い住民に関しては,負担金の支払意志があり,路上駐輪問題に対する問題意識の高さがうかがえた.
保管料の支払意志額モデル,駐輪場所選択モデルの2つのモデルを用いて,撤去頻度の強化に要する限界費用を試算した.そして,負担金支払意志決定モデルを用いて,世帯数で拡大した上で試算した撤去活動の頻度を強化した場合の負担金の金額と,撤去頻度の強化に要する限界費用を比較し,撤去活動の頻度の強化の可能性を探った.その結果,九条駅以外の3駅にでは,撤去活動の頻度を週に2〜3回,平日毎日に強化する可能性を見出すことができた.

前のページに戻るには"戻るボタン"で戻ってください。