kan13702

杉本有基

ミクロ交通シミュレーションを用いた長岡大花火大会における交通渋滞緩和施策の評価

佐野可寸志，西内裕晶

長岡大花火大会は2日間で観光客が100万人規模である花火終了時刻前後に観光客が一斉に帰宅し，21時から24時にかけて会場周辺で交通渋滞が毎年発生する．特に長岡IC方面に向かう国道8号線では約4km進むのに最大で約3時間かかる記録が残っている．よって渋滞緩和施策としてシャトルバスの運行，レール＆ライドなどが実施されている．しかし渋滞のボトルネックが明らかでないため，これらの渋滞緩和施策の効果を評価するのは困難である．その理由として渋滞はボトルネックを先頭に発生しているからである．既往研究でも渋滞のボトルネックを明確にして渋滞緩和施策の効果を評価することが必要であると指摘している．そこで本研究では長岡花火大会時に交通調査を行い，渋滞のボトルネックを明確にし，交通シミュレーション『Paramics』を用いて長岡花火大会時の精緻な交通状況の再現を行う．その再現をもとに渋滞緩和施策の効果を評価することを目的とする．
研究方法は，ボトルネックを明確にするために，平成25年8月3日に長岡ICで交通調査を行った．その調査結果から料金所と新潟方面本線合流車線の交通容量計算を行い，ボトルネックを明確にした．ETC通行履歴データからは長岡市周辺ICのリンク交通量の算出を行った．これらのデータと駐車場データを，時間帯OD交通量推計ソフトに入力し，その結果を初期OD交通量とした．その初期OD交通量及び観測リンク交通量，シャトルバスデータなどを『Paramics』に入力し，現況再現を行った．現況再現結果の再現性を評価した後，5点の渋滞緩和施策を現況再現に導入した．渋滞緩和施策は，①利用ICを分散した場合②信号制御を変更した場合③シャトルバスをなくした場合（実施されているシャトルバスの効果の確認）④フェニックス大橋及び，左岸バイパスを追加した道路ネットワークの場合⑤国道8号線の車線利用率の変更した場合の5点である．現況再現と施策導入後の車両の所要時間の差を比較することで，各緩和施策の評価を行った．
調査結果から新潟方面本線合流車線の交通容量は1,295(台/時)で，料金所交通容量は2,628(台/時)であり，その差は1,333(台/時)であった．これより，新潟方面本線合流車線がボトルネックといえる．
現況再現では観測リンク交通量とシミュレーション交通量の相関図から決定係数を求めたところ21時台で0.38，22時台で0.40，23時台で0.59となり，全時間帯で再現性があった．現況再現の全車両平均所要時間は17.3分であった．緩和施策①は16.2分，緩和施策②は17.8分，緩和施策③は19.3分，緩和施策④は16.8分，緩和施策⑤は16.1分となった．効果が一番大きかったのは③のシャトルバスである．シャトルバスはすでに実施されているが，バスの台数を増やすことや新ルートでも実施するなど効果を上げることが出来ると考えられ，シャトルバスの強化を提案する．次に効果が出たのは①と⑤である．①と⑤は実施されていないため，この2点も渋滞緩和施策として提案する．

前のページに戻るには"戻るボタン"で戻ってください。