佐藤奈穂

地上型レーザスキャナの反射強度情報の特性と利用可能性

力丸厚 坂田健太

3次元レーザ測量は反射強度、位置情報などを直接触れることなく取得することができ、高精度な計測を期待できるリモートセンシング技術のひとつである。この3次元レーザ測量に用いられるレーザ波長帯は短波長赤外域(1300nmから2500nm)であり、物体に水分が存在する場合、光を吸収する性質がある。リモートセンシング分野において、この吸光帯の反射率を用いた地表面や植生の水分量の評価手法等への利用が進んでいる。
この3次元レーザ測量には航空機にスキャナを搭載して計測を行う航空レーザ測量と地上にスキャナを据え付けて計測を行う地上型レーザ測量の二種類が存在する。小林ら(2005)は、航空レーザ測量による土壌水分量推定の可能性を示唆しているが、航空レーザ測量によることを前提としているため計測対象への距離や角度が一定とされ、地上レーザ測量ではこれらが大きく影響すると考えられる。これを受け、晒(2012)は距離と角度に関する実験を行い、それらの影響について検討している。
本研究では、幅の異なる格子状の試験体を作成し、距離を変えレーザスキャナで反射強度を計測し、レーザスポット内に対する格子の占有率に伴う反射率減衰傾向について検討することを目的とした。併せて吸光特性を持つ短波長赤外域に着目し、レーザスキャナ計測による土壌と植生の反射率と含水量を比較し、土壌と植生の含水量推定への利用可能性について検討した。
本研究では地上型レーザスキャナによって計測される反射強度情報において、計測対象物の占有率の低下に応じて強度が減衰することが分かった。レーザスキャナの反射率における距離に応じた低下は、レーザスポット内に対する水稲の葉茎面の占有率が影響していることが示唆された。レーザスキャナを用いた測定の際にはレーザスポットの径を考慮して行わければならないことがわかった。地上型レーザスキャナによる土壌及び植生の反射強度計測に関して、含水率が高くなるごとに反射率が低くなる傾向がみられた。さらに分光計測器による分光反射率検証計測を行った結果、植生は含水率と反射率の間に高い相関をみることができなかった。しかし、土壌に関してはレーザスキャナによる計測結果同様、含水率と反射率の間に高い負の相関がみられたため、反射率は水分量による影響を受けることが分かった。

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