阿部 惇稀

地上観測による水稲生育期の時系列分光反射特性と植被率の把握

力丸 厚 坂田 健太

近年、日本の稲作は、田植えを基本に機械化が進み、労働生産性が大幅に上昇した。しかし、近年の米の生産量は過剰で、米の価格は低下してきている。一方で、消費者は、安全で美味しい米への関心が高まってきている。生産者側は、水稲の収量や、食味を安定させ、年間の採算をある程度予想することが必要であり、消費者に受け入れられるための努力も必要となってきている。食味の向上と、低コスト化を実現させるため、高精度かつ低労力で行える生育コントロール方法が望まれる。そのため、稲作農業においては、米の品質維持、収量安定とともに、稲作の効率化、省力化を目的とした研究が進められている。特に、水稲の生育初期の状態が、その後の生育へ与える影響が大きいことから、早期段階で水稲の生育を診断する事が好ましいとされている。現地で行う生育調査は、水稲の細部まで調査する事ができ、早期段階における生育診断に有効である。しかしながら、現地で行う生育調査では時間がかかってしまうため、広範囲に分布している水田の全圃場を診断する事が困難である。そのため、広範囲の情報が取得できるリモートセンシング技術を利用した生育情報の把握が注目されている。
リモートセンシング技術を用いて、観測対象物との対応を明らかにするためには、リモートセンシングによるデータの取得以外に、現地の様子を地上観測にて把握する必要がある。そこで、本研究では、地上観測により水稲の分光反射率及び植被率の特性を把握した。また、衛星画像を用いて水稲の分光反射率を算出し、地上観測による分光反射率との関係について検討することを目的とした。
まず、可視域において、出穂までは反射率が減少し、それ以降は増加する傾向が確認できた。近赤外域においては、出穂までは反射率が増加し、それ以降は減少する傾向が確認できた。そして、分光反射率と植被率の関係については、近赤外域において高い相関がみられた。また、Landsat-7を用いて取得した衛星画像から算出した反射率と、地上観測により得られた反射率を比較したが、誤差はあるものの両反射率は同じような傾向がみられた。これらの成果から、人工衛星画像を用いて分光反射率を算出することで、広範囲に分布する圃場の生育情報を把握できる可能性が示唆された。

前のページに戻るには"戻るボタン"で戻ってください。