丸山 貴士

水稲群落上方からのレーザスキャナ計測による生育モニタリングに関する検討

高橋 一義
力丸 厚

高品位米の安定生産には、適切な栽培管理が必要である。そのためには、定期的な生育調査により水稲の生育状態を把握することが不可欠である。生産現場では、慣行的に草丈、茎数、葉色を直接計測する生育調査法が普及している。
分げつ期から出穂期までの生育期においては、草丈、茎数が急速に変化するため、高頻度な生育量の把握が求められる。慣行計測では、一株ずつ計測するため計測箇所の影響を受けやすく、計測結果の空間代表性が低い。このため、計測時の作業労力低減や能率向上、計測結果の再現性と空間代表性の向上を目的として、リモートセンシング技術を用いた計測手法が研究されている。リモートセンシング技術を用いた計測手法の中で、レーザスキャナは土木分野を中心に普及している能動型の光学センサであり、計測時の天候の影響を受けにくい計測装置である。
レーザスキャナは対象物の形状情報を取得する。このため、水稲の生育程度が同一であっても圃場での栽植密度、稲株の植付け方向、レーザ走査面の傾きの違いにより取得されるレーザスキャナデータが変化する可能性があり、広域のレーザスキャナ計測を実施するためには、これらの影響を調査する必要があると考えた。
本研究では、小型無人機を利用して水稲上空からのレーザスキャナ計測により広域の水稲生モニタリングを実施する際、計測対象圃場の栽植密度、植付け方向、レーザ走査面角の違いが取得されるレーザスキャナデータにどの程度影響するかを地上実験結果から検討した。
その結果、①レーザ走査面の傾きによらず、99%tileレーザ計測高さは草丈と高い相関を示した(R2=0.97以上)。②レーザ走査面を斜めにすることで、群落内で反射するレーザ光の割合が高くなり、群落下層ほどこの傾向が強く現れた。③生育量を表す乾物推定指標値が同じ場合、栽植密度が高い区画では、走査面角の傾きによらず、植付け方向の違いにより取得されるレーザスキャナ計測データが変化(平行区画と直交区画で鉛直計測時と斜め計測時でそれぞれ平均0.13m、0.17mの差があった)する可能性が確認された。
これらの結果より、水稲上空からのレーザスキャナ計測により広域の水稲生育量を把握する際、とくに密植な圃場では、作付け条件の影響を考慮する必要があることがわかった�

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