田子 彰大

航空レーザスキャナ計測による波形記録情報を用いた森林構造の把握に関する検討

力丸 厚
高橋 一義

本研究では、新潟県長岡市の信濃川に沿って観測した航空レーザスキャナ計測の波形記録情報に着目して森林構造の把握を行った。波形記録情報では、群落内部まで詳細なデータが得られることから、森林群落の把握に役立つと考えられる。長橋は、航空レーザスキャナ計測データを林床から高さ毎に区切った点群データにより算出した各層点群比率で解析し、森林構造の把握を行っているが、1つのレーザ経路での点群分布で解析がなされていない。また、点群データは点の情報としか扱われていない。
そこで本研究では、レーザスキャナ計測データの波形記録情報である1つのレーザ経路の空間位置情報と反射強度を用いて、森林構造の把握することを目的とした。まず、空間位置情報を用いて、樹木の透過特性と樹木内部の鉛直分布を解析し、群落の疎密状態を把握する。反射強度を用いて、葉面の空間占有状態を把握する。
樹木内部の鉛直分布把握の解析では以下の結果となった。反射点数4、5について比較すると、オニグルミの場合、Z値の上位四分値の近似曲線は傾きが緩やかで、Z値の下位四分値は傾きが急であることと、5m以上からZ値の中央値とZ値の四分値との差が小さくなることから、鉛直分布として樹冠長が短く、反射点が密になっていることがわかった。ハリエンジュは、オニグルミと同じ傾向にあることがわかった。また、シロヤナギは、他の森林構造と違い、Z値の上位四分値の近似曲線は傾きが急で、Z値の下位四分値は傾きが緩やかであることと、3mから樹頂点まで反射点が存在し、Z値の中央値とZ値の四分値との差が大きくなることから、鉛直分布として樹冠長が長く、反射点が疎になっていることがわかった。
反射強度を用いた葉面占有の空間特性把握の解析では以下の結果となった。一部で葉面占有率に差が生じ、樹種分類の可能性が示唆された。樹種混交の箇所については比較的高い葉面占有率であった。これは、ファーストパルスのZ値の上位四分値の平均をとっているが、複数の樹種の場合、鉛直分布の違う樹木が混ざっているため、Z値の上位四分値をとったとしても、複数の葉面を有している可能性があるため葉面占有率に影響が出たと考えられる。また、葉面サイズを用いて、式から1枚あたりの葉面占有率の算出を行った。1枚あたりの葉面占有率は計測値の10〜20%程度であった。これは、計測値の場合、隣接する小葉の影響でZ値の上位四分値のデータでも1枚に分離できないことがわかった。しかし、反射強度と10m以上のファーストパルスの四分値以下のデータを用いることで葉面把握が行えることを示唆したものであった。

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