佐藤 祐介
環境条件の空間的差異がコンクリート部材の時間依存性変形に及ぼす影響
下村 匠
建設から数十年が経過したPC橋梁における長期たわみが設計段階の予測値を大きく超える事例が報告されている.長期たわみの支配的要因として,温度・湿度分布状況の差異の影響が報告されている.本研究では,橋梁の桁断面内の空間的水分勾配に着目したPC梁部材試験を実施した.また,本研究室においては,既往の研究として乾燥と持続載荷が同時に作用する梁部材の実験と解析的検討を行っており,数値解析モデルの妥当性が検討されている.本論文では,持続載荷試験により時間依存性変形に関するデータを取得し,PC梁部材における変形を再現する数値解析モデルの構築を目指した.
乾燥を受けるPC梁部材の持続載荷試験では,乾燥条件の異なる3つの試験体を用いて部材の変形挙動に関するデータを取得した.実験結果より持続載荷中の乾燥の有無は,梁部材の変形挙動に対して大きく影響したことが明らかとなった.また,コンクリートの上側と下側で乾燥条件が異なる試験体では,長期的なたわみが予想以上に大きくなる.これは,上縁ひずみ量が予期せぬほど過大になったことが原因である.本実験においては,断面内の空間的水分勾配が部材変形に対して影響することを確認した.
別実験として,コンクリートの特定面を湿潤状態とする試験を実施し,コンクリートの給水膨張が部材変形に対してどの程度影響するのかを検討した.実験の結果から,体積変化の影響が給水直後に発現し,長期的には変形勾配が小さくなることが確認された.また変形量は,持続載荷試験よりも小さく,影響度は持続載荷によるクリープ等に比べて小さいことが明らかとなった.
また,PC梁部材の持続載荷試験の実験結果を数値解析において検証し,数値解析モデルの妥当性について検証した.現行の乾燥と持続載荷の数値解析モデルを基に,プレストレスによる初期応力を考慮した数値解析を実施したところ,実験と数値解析は,一致しない結果となった.このことは,乾燥と持続載荷が同時作用する部材では,乾燥クリープが加速する可能性が原因として挙げられる.
本研究では,断面内の空間的水分勾配により,PC梁部材のたわみが予想以上に過大になることを確認した.また,部材内の水分量による体積変化のPC梁部材への影響度を把握した.数値解析モデルの検討では,乾燥クリープの評価を含む時間依存性変形の考慮手法が今後の検討課題となった�
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