内田 康平

凍結防止剤による塩害を受けるコンクリート構造物の表面塩化物イオン濃度分布

下村 匠

近年,凍結防止剤によるコンクリート構造物の塩害事例が多く発生している.凍結防止剤による塩害の特徴は,冬期の短期間に集中して高濃度の塩化物イオンの供給を受けること,損傷箇所が路面排水の流れる箇所および飛散箇所付近に限定されることが挙げられる.そのため,定常的に塩化物イオンが供給される飛来塩分による塩害と比較した場合,局所的に塩害が発生するため鋼材の劣化箇所の検討が難しい.外観に変状が無い場合でも簡易的に表面塩化物イオン濃度分布を実測し,劣化箇所の検討をすることが必要である.
塩害により損傷した構造物の補修範囲等を検討する際,コンクリート中の塩化物イオンの浸透性を考慮することが要求される.この場合,補修を検討する範囲において,塩化物イオン濃度分布を調査することになり,安全側を考慮して最も塩化物イオンが浸透している箇所で実施する必要がある.適切な位置でこの調査を実施するためにも,簡易的に表面塩化物イオン濃度を実測し,最も塩化物イオンが浸透している箇所を選定することが重要である.そこで,本研究では,表面塩化物イオン濃度分布の実測方法の検討を行った.
はじめに室内実験より,飛来塩分を模擬した実験、凍結防止剤による塩分の供給を模擬した実験を行い,コンクリートの表面塩化物イオン濃度分布の実測方法の検討を行った.そして,凍結防止剤による塩害を受けるコンクリート構造物の表面塩化物イオン濃度分布の調査を行った.その結果,室内実験において,グラインダによりコンクリート表面を切削して測定される塩化物イオン量から,表面に付着している塩化物イオン量を差し引くことで求めた表面塩化物イオン濃度は,内部の塩化物イオン濃度分布の延長上に同定される表面塩化物イオン濃度に近い値となることが確かめられた.表面拭き取りは,断面剥離が生じている付近で表面塩化物イオン量が高く,凍結防止剤の流れた箇所でも高い測定値だったため,凍結防止剤の塩害を受ける構造物において表面塩化物イオン量の高い位置を検出することが可能である.分光分析は,測定箇所におけるサンプル数を増やすことによって,表面塩化物イオン濃度の高い位置を検出することが可能である.

前のページに戻るには"戻るボタン"で戻ってください。