ken11504

飯島翔弘

緩衝金具を有する落石防護工の解析手法の簡易化に関する研究

岩崎英治

我が国では，地震や気候および地形などの条件から多くの落石災害が発生している．そのため，数多くの落石対策工が施されている．その一種である落石防護網（以下，防護網）は，落石エネルギーの吸収性能が高いだけではなく，施工性・補修性の高い防護工である．しかし，施工までに斜面環境の事前調査や，防護網の性能評価実験が必要であり，調査に要する期間の長さが課題となっていた．その課題に対して，既往の研究により，動的応答解析で性能評価実験の結果が再現可能であることが示された．しかし，動的応答解析は膨大な解析時間を要する．今後，落石防護網を設計する際の指標となる設計式を導くためにも，更なる解析が必要とされており，解析手法の簡易化が課題となっていた．そこで本研究では，膨大な解析時間を要する動的応答解析の簡易化を図るため，静的応答解析により性能評価実験の再現を行う．その後，様々な重錘の衝突条件を与えたモデルの解析を行うことで，その解析結果から落石防護網を設計する際の指標となる値を簡易的に導き出すことを目的としている．
本研究では従来行っていた研究で，実験結果と一致しない不自然な点を無くすため，新たに解析条件をフレームを剛体とした固定支持から，フレームも変形することを考慮して弾性体とした弾性支持を取り入れた．
始めに，動的応答解析により衝突実験をほぼ再現できることを確認した．従来では振動を実験結果に近似するためにワイヤ断面積を少なくしていたが，条件を弾性支持にしたことによって近似した結果になった．
　次に，静的応答解析により動的応答解析の解析結果を再現可能であることを示した．また，解析手法の変更を実現したことにより，解析所要時間の大幅な短縮に成功した．これにより，更に多様な条件で解析を進めることが出来るようになった．
　このように，各解析によって防護網のモデル条件と重錘の衝突条件が，防護網の挙動に与える影響を解明した．この解析結果を元に，実斜面における落石を想定した上で防護網にとって最も危険側の条件となる衝突位置を基準とした，最大滑り量とたわみ量の設計式を提案した．また，各設計式で算出した値と解析値を比較し，設計式の解析結果の再現度を確認した．

前のページに戻るには"戻るボタン"で戻ってください。