中嶋龍一朗
耐候性鋼材の短期曝露試験による長期腐食予測に関する研究
岩崎英治
近年,国内での建設構造物の老朽化が進み,低コスト,かつ耐久性の高い構造物が求められている.昨今において構造物の供用期間に要するライフサイクルコスト(LCC)の低減が必要とされており,鋼橋の建設では,塗装の定期的な塗り替え,メンテナンスなどを含む維持管理費の縮減が求められている.主に塗装による防食法が用いられてきたが,時間とともに防食性能は低下していくため,要求される性能を維持するためには塗装の塗替えが必要となってくる.そのため,メンテナンス費用を軽減できる耐候性鋼材を使用した橋梁の建設が注目されている.
耐候性鋼材の適用に関しては,架設現場の環境条件などに配慮して使用することが重要であり,その適用性評価方法の1つとして現地曝露試験による方法がある.一般に,耐候性鋼材の適用性判定には,飛来塩分量の計測が用いられてきたが,飛来塩分量は1か月ごとの交換が必要となる.一方で,曝露試験の場合は設置と1年後の回収する作業のみとなるので,比較的作業が簡便となる.1年間の短期曝露試験においては,1年間の腐食減耗量30μm以下であれば,耐候性鋼材の適用が可能とされている.また,将来の腐食減耗量を,2つの腐食速度パラメータと時間の関数で予測する方法が提案されており,複数年曝露,あるいは1年間曝露試験の結果より,将来の腐食減耗量を推定することが可能となっている.しかし,短期曝露試験においてその曝露期間は,開始時期,終了時期に指標が無く,その影響について検討されていない.
そこで本研究では鋼材曝露試験において試験片の設置する時期の影響を調査するとともに,それに伴い長期腐食予測の変動について把握することを目的とした.具体的には,飛来塩分量調査,風向風速調査,また曝露試験の開始時期を数か月ずらして調査を行い,曝露時期による腐食減耗量調査結果の変動とその他の腐食因子との関係について検討した.また,調査対象橋梁の腐食環境における各腐食因子の関係を把握し,曝露時期による曝露試験への影響を補正する方法について提案した.
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