登藤 雄平

大河津分水路の河道形状の長期的変化とその対策工の評価

細山田 得三

大河津分水路は,信濃川が日本海に最も近づく地点の大河津から寺泊海岸を結ぶ,全長約10kmの人工河川である.かつて越後平野は低湿地帯で洪水多発地域であり,その被害を無くす為,大雨などにより増水した信濃川の水の一部を日本海へ流し,もう一方は越後平野に生活用水や農業用水など安定した水を供給するために建設された.大河津分水路は建設時,河口部の掘削量の低減を図る為,通常の河川のように河口部に向かうに従い川幅が広くなる形状とは異なり,分流点での川幅が約720mに対し,河口付近では180mと河口部に向かうに従って川幅が狭い形状になっている.川幅が狭い分,増水した水を流す為に,河口部の狭い川幅を急勾配にし,流速を高めることで必要な流量を確保するという設計により建設された.そのため,洪水時には水流に勢いがつき,河床が洗掘されるという問題が起こっている.
そこで本研究では,大河津分水路の実断面データ,流量・水位観測データを用い,大河津分水路における土砂の輸送及びそれに伴う地形変化についての解析を行い,土砂の生成や河床低下が顕著であると予想される箇所の把握,床固・床留工などの河床低下対策工の効果を検討した.また,洪水時のみならず平常時の土砂の輸送及び地形変化について一年間に渡る解析を行った.解析には常射流混在流の河川においても解析を行うことの出来るFDS法を用い,河川全体を把握する事ができ,長期間の解析に適した一次元での解析を行った.
一年間という長期間の解析を行うことで,時間的かつ空間的な河川流による土砂の輸送に伴う地形変化の解析を行い,土砂の堆積・侵食の発生箇所の把握を明らかにした.これにより,融雪季や洪水時などの時間的変化及び,大河津分水路全体を通しての場所的変化を明らかにし,河床低下が顕著である時期,箇所についての傾向を捉えた.また,河床低下対策工として設置されている床固・床留により,河床全体の河床低下を低減していることが分かり,床固・床留工などの対策工は大河津分水路にとって重要な存在である.その対策工の補強工事や改築工事を進めることで,河床低下防止に繋がると言える.しかし,河床低下対策のために建設された床固・床留などの対策工の直下流部での局所洗掘による河床低下が著しく,今後は対策工の維持だけでなく,直下流部の河床低下対策も講じる必要があるということが分かった.

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