中村 渓太

中越地域の電子地盤図の作成と防災への応用に関する研究

大塚 悟

電子地盤図は,「生データ」の集合体である地盤情報データベースの情報を単に連携するのではなく,地質・地盤工学的解釈を加えて提供することにより地盤情報活用を目的としている.全国電子地盤図とは,各地域における250m区画毎の深さ100m より浅い地盤の代表的地盤情報を全国統一基準でモデル化を電子的に作成,追記,保存できるシステムであり,そこに含まれている情報はインターネット経由で閲覧・ダウンロードができる.本研究では,全国電子地盤図内の新潟県長岡市と柏崎市,上越市の3つの地域で電子地盤図を作成し,防災への応用を目的とする.分析では,中越地震による家屋被害分布・土地条件グループを使用し中越地震の家屋被害と平均N値の影響を,また,土壌雨量指数を用いて先行降雨が与える土砂災害への影響を検討した.
電子地盤図作成では,各地域の地盤特性を把握することができた.長岡市は,長岡砂礫層の分布,後背湿地で粘性土層が堆積しておることが確認できた.柏崎市は,粘性土が優勢で平均N値5以下の分布を示し,粘性土が主体で軟弱地盤が形成されている.上越市は,柏崎市同様に粘性土が主体で軟弱地盤が形成されている.また,沖積層の層厚も最大で60m程度の特徴も示すことができた.
中越地震の家屋被害と平均N値の影響に関する統計分析において,土地条件を4つのグループに区分した.人工地形の家屋は10%強の被災率に対し,傾斜地形では約55%と被災率に差異のあることが示された.土地グループ別平均N値分析では,表層から5m・10m・15mでの平均N値に差異がないことが明らかとなった.地形グループと表層から10m平均N値の複合による統計分析では,人工・水部・平坦地形は平均N値が大きくなると被災率は減少する傾向を示す.傾斜地形については, N値の高さに依らず,被災率は一定である結果が示された.中越地震の家屋被害分析から,家屋被災率は土地条件および平均N値との相関が大きいことが明らかとなった.
土壌雨量指数は土砂災害の発生危険度を示すものです.先行降雨が与える土砂災害への影響の統計分析では,7.13水害では土壌雨量指数が約140強と非常に高い値を示した.長岡市の土砂災害警報の基準値範囲内であることから7.13水害の時には非常に高い危険度であることがわかった.また,急激に上昇し,その後は下降していることから,短時間で非常に激しい雨だったことが土壌雨量指数からもわかった.

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