小石 悠介

東日本大震災における火山灰質盛土の実験・解析的考察

大塚 悟

2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震では,マグニチュード9.0,最大震度7を記録し,東北地方を中心に深刻な被害をもたらした.福島県会津若松市の一其中学校付近の宅地盛土では,液状化が原因とみられる円弧すべりによって大規模な盛土崩壊が発生した.崩壊した盛土材は火山性堆積物であり粒子破砕の影響が懸念される.火砕流堆積物は,全国各地に幅広く分布しており,運搬コストの削減などの理由から近場の人工盛土への適用事例も多い.しかし,粒子破砕における施工管理の基準はなく,粒子破砕が地盤へどのような影響を与えているか未解明な部分が多い.本研究では,土の粒子破砕に着目し,福島現地採取土に対して,三軸圧縮試験機を用いた等方圧密やせん断試験による盛土材の粒度変化を調査するほか,静的および繰返し三軸試験により強度特性を調査した.また,得られた物性値を用いて,二次元斜面安定計算システムPower SSAを用いたNewmark法による地震時変形解析を行い,粒子破砕が地震時における盛土変形へ与えた影響について調査した.
その結果,福島現地採取砂は,有効応力p’=100kPaまでの等方圧密で粒子破砕率が急激に増加することがわかった.また,有効応力p’=100〜600kPaの等方圧密では,粒子破砕率にほとんど変化が生じなかったため,この試料における有効応力と粒子破砕率の関係は,直線的なものでなく,段階的な関係であることも示唆した.また,非排水せん断試験では,有効応力が増加するに従って,粒子破砕率が増加し,その結果せん断抵抗角が減少する傾向がみられた.繰返し三軸試験では,有効応力の増加とともに,粒子破砕率が増加し,その結果液状化強度が低下する傾向がみられた.地震時変形解析では、せん断抵抗角の減少に伴い,地震時累計変形量が大きくなることがわかった.なかでも,粒子破砕の増加が著しい領域で累計変形量も急増する傾向がみられた.
以上のことから,福島現地砂は有効応力p’=0〜100kPaの圧密で,急激に粒子破砕が生じることがわかった.したがって,円弧すべり最深部の土被り圧が有効応力p’=87kPaの本盛土では,粒子破砕の影響を強く受けていたと考えられる.東北地方太平洋沖地震によって大規模な崩壊を起こした福島県会津若松市一箕中学校付近の宅地盛土は,圧密による有効応力の増加とともに粒子破砕が急激に増加し,それに伴いせん断抵抗角及び液状化強度が減少した.そしてこれが地震時の盛土変形に大きな影響を与えたと考えられる.

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