名前 小林 岳史
論文題目 粘弾性を考慮したアスファルトバインダの性能評価方法に関する研究
指導教員 中村 健
現在,我国ではアスファルト発生材を再生利用する際,針入度を用いて評価している.この針入度はアスファルトの見かけ上の硬さを示す指標であり,供用後のアスファルト廃材から抽出された劣化アスファルトの針入度が,20 (1/10mm) 以上あれば再利用可能であるとする規定が設けられている.しかし近年では高機能舗装の普及に伴い,もともと低針入度である改質アスファルトの需要が増加傾向にある.そのため,発生するアスファルト廃材は数種のアスファルトバインダが混ざった状態で回収されている.しかし再生利用する際に,針入度はバインダのコンシステンシーを評価しているにすぎず,劣化アスファルトの性状を正しく評価することが困難な状況にある.したがって,現在再生利用における試験方法として,バインダのレオロジー特性を考慮した性能評価方法が求められている.
これを受けて既往の研究では,伸度試験機にロードセルを搭載した荷重測定型伸度試験を実施し,その試験結果から得られるFD値より,改質材を含む発生材におけるバインダ性状を評価してきた.結果としてFD値と混合物の疲労破壊抵抗性との間には高い相関性が認められ,バインダ性状から間接的に混合物の物理性状を評価可能であることが確認された.また,新規ストレートアスファルト混合物相当の疲労破壊抵抗性を有する再生混合物を作製するための規格値としてエネルギー値800(N・mm)が提案された.しかし既往の研究において,この荷重測定型伸度試験が新たに提案する試験でありバインダのどのような性能を測定しているのかが不明であった.そこで本研究では動的粘弾性状,塑性流動抵抗性,疲労破壊抵抗性を間接的に評価できるDSR試験との比較を行うことで,荷重測定型伸度試験がバインダのどのような性能を評価している試験なのかを明らかにする.これにより,本試験方法がバインダの評価試験として利用可能であると証明するために研究を行った.以下に本研究で得られた知見を示す.
荷重測定型伸度試験より得られる変位・荷重グラフのピーク値は単一バインダでみた場合,DSR試験におけるG*(複素弾性率)に相当し,バインダの硬さを表現しているといえる.また,変位・荷重グラフにおける帯の部分はバインダが破壊に至るまでの許容量に相当するものと考えられ,この許容量は外力およびひずみにより物体に生じたエネルギーを外部へ拡散,もしくは吸収する成分である散逸エネルギーであると思われる.よって,荷重測定型伸度試験を用いることでバインダのレオロジー特性を測定することができるといえる.
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