下田雅治
地方都市における長期優良住宅の立地実態とその課題に関する研究
樋口秀、中出文平、松川寿也
長期優良住宅の普及の促進に関する法律が平成21年6月4日に施行された。この法律は「長期にわたり良好な状態で使用するための措置が講じられた住宅の普及を促進することで、環境負荷の低減を図りつつ、良質な住宅ストックを将来世代に継承することで、より豊かでやさしい暮らしへの転換を図る」ことを目的としている。しかし、長期優良住宅は認定条件に立地規制の項目がなく立地規制がされていない。現在地方都市部では人口が減少に転じている社会で、100年住宅と言われている長期優良住宅が郊外部や市街地内でも周辺部に立地することは日常生活で車の使用が不可欠となり環境負荷が高くなる。さらに、将来的に市街地の拡散を招いてしまう恐れがある。
そこで、本研究では長期優良住宅の立地動向やその周辺環境を明らかにすることで、長期優良住宅制度の抱える課題を探ることを目的とする。
全国で長期優良住宅の認定を受けた住宅は戸建て住宅が約34万戸、共同住宅が約8千棟となっており、計35万件となっている。これは同期間内に建てられた新築一戸建て住宅数に対して全国平均の20%に値する。全国平均に近い新潟県を取り上げ、長岡市、上越市、柏崎市で住宅単体と立地場所に関するデータを入手し、分析した。
長期優良住宅の詳細な立地特性を見るため、長岡市市街化区域内の361町丁目をクラスター分析することにより、中密商住密接地区と高密住宅街地区、低密新市街地区、低密低整備地区の4つのクラスターに分類できた。その中で低密低整備地区はクラスターごとの買い物に対する満足度を見ると、低密低整備地区では25%の世帯が買い物に関して満足していないという結果がでた。低密低整備地区は店舗までの平均距離が他の地区に比べ約1.3kmと最も長くなっていたことからも、この低密低整備地区は他地区に比べると日常の買い物をしにくい環境であることがわかった。
長期優良住宅居住者に対して居住意向についてアンケート調査を実施した。その結果、40歳未満の世帯では約3割が永住の意思がないという結果になった。また、現居住は100年後に今の住宅のまま使用されていると考えている世帯は少なく次の居住者への居住継承の仕組みが必要になると考えられる。
本研究で明らかになったこととして、クラスター分析をした市街化区域内でも低密低整備地区では生活環境に満足していない世帯の割合が高かった。このように、長期優良住宅は生活しやすい環境あってこそ持続性を保てるので立地規制が必要ではないかと考えられる。
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