安澤尚紀

新規に設定した都市計画区域の技術的基準に関する研究

中出文平、樋口秀、松川寿也

モータリゼーションの進展により、都市計画区域を指定していなかった小規模な自治体での都市的土地利用の拡大が顕著となり、無秩序な開発を引き起こしている。さらには平成の大合併による都市計画区域の再編もみられた。このような背景に対し、無秩序な開発を未然に防ぐためにも都市計画区域を指定し開発規制を図ろうとする自治体が存在する。しかし、区域の画定によって発生する課題については明らかになっておらず、都市計画区域指定に踏み込めない自治体も存在する。
そこで本研究では、都市計画区域指定時の技術的基準に着目し、都市計画区域を指定した際の課題を明らかにする。これらの区域では新たに建築基準法第3章の集団規定が適用され、技術的基準(建蔽率、容積率、斜線制限、接道義務)を充たせない建築物が発生する。そのため、都市計画区域の画定の障害になり得る既存不適格建築物の現状を把握することで、今後の対応策や課題を明らかにする。また、実態を明らかにすることで、現在都市計画区域の指定に踏み込めない自治体に対し、土地利用規制を担保する手法としての都市計画区域指定を促すための提言を行うことを目的とする。
研究手法は、既往研究で明らかとなっている新規に土地利用規制を目的に都市計画区域指定した40都市を対象とし、その中から、区域区分の有無、都市計画区域の新設と拡大によって分類した。次に各類型から都市を抽出し、詳細対象5都市について調査及び分析を行った。
都市計画区域指定時に発生する、建築基準法第3章の集団規定であるが、各都市で様々な対応を行っていることがわかった。地区ごとに建蔽率を緩和したり、2項道路指定しセットバックさせたりと、今まで問題視されていた集団規定も、対応の仕方によってはあまり問題とならないことがわかった。しかし、一部の地域では、集団規定に対する不適格要素を複数持っている建築物が多く、都市計画区域指定を見送った事例もあり、技術的基準が都市計画区域指定の障害になることがわかった。
本来、土地利用規制を目的に都市計画区域を指定するはずだが、集団規定の技術的基準を充たせないという理由から断念するのはおかしい。そのためにも、都市計画区域の指定と集団規定の適用を分離させ、柔軟な指定が行えるような仕組み作りが必要である。また、区域の実情を事前に行政が把握する必要があり、現在各自治体に一任している事前調査のマニュアル化が望まれる。

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