kan12706

栁澤　薫

南魚沼市における公共交通利用者の交通行動分析

佐野　可寸志

本研究の背景には，南魚沼市の公共交通において，地区または集落間で生じているサービスの格差および高齢化の問題がある．この問題を解決するため，本研究では，集計および非集計分析を行うことで公共交通利用者の交通行動を把握し，新しい公共交通について検討することを目的とする．
平成24年に実施された市民アンケートの単純集計により，公共交通である市民バスや民間バス，タクシーなどの利用者は，高齢者の割合が高いことがわかった．このことから65歳以上の高齢者の買い物および通院に関して年齢と交通手段のクロス集計を行ったところ，共に年齢が上がるにつれ，自家用車による家族や友人等の送迎や，市民バスの利用割合が高くなっていた．買い物に比べ通院では，市民バスや送迎の利用割合が高いことがわかる．また，通院先については，市立や県立の病院および駅付近の医院に集中していることが単純集計でわかった．以上より，新しい公共交通として，出発地からある程度決められた目的地に直接行くことができる高齢者の通院に適したデマンドタクシーのようなものが必要ではないかと考えた．
現在の65歳以上の通院者の交通行動を再現するために，非集計ロジットモデルを作成した．作成したロジットモデルは，市民バスおよび民間バスが入れ子型になったＮＬモデルある．その他の交通手段は，バス，自家用車の送迎，バイク・自転車，徒歩である．なお，これらの交通手段別の個人データは，アンケート結果をもとに，地区割合で300サンプル抽出し，距離，所要時間，料金を算出したものを用いた．その結果，尤度比0.26，的中率46.0％のモデルが完成した．このモデルのパラメータを用いて，新しい公共交通であるデマンドタクシーの効用を求め，他の交通手段の効用と比較し移行を確認した．デマンドタクシーの料金を300円から200円に下げたところ，移行人数が9人から96人に増加した．このことは，アンケートの有料化意向からも同様な結果が見られたことから，200円と300円の間に，高齢者の利用意向変化がみられることがわかった．また，デマンドタクシーへ移行しない人の多くが，比較的，通院滞在時間が長い人だということがわかった．このことから，今の条件では，通院滞在時間が長い人にも対応できるデマンドタクシーや現在市民バスが不便な地域で，自家用車(送迎)よりも便利なデマンドタクシーを考える必要があると考える．
より再現性の高いモデルが必要であるが，現段階では，新たなデマンドタクシーは，運行日数を必要最低限に減らすことで，無駄な費用と所要時間を減らし，需要を集中させることが必要だと考える．

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