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霜田健太

消雪パイプ網を利用した打ち水による夏季熱環境改善技術の開発と効果の検証

小松俊哉, 姫野修司

　近年、多くの都市で都市化による人工排熱の増加、閉鎖的空間での熱の滞留などが原因となって郊外に比べ都市部の気温が高くなるヒートアイランド現象が進行している。このヒートアイランド現象は、気温の上昇により自然環境が影響を受け、真夏日や熱帯夜の増加、局地的豪雨を引き起こし、住民の生活や熱中症の原因など健康にも影響を及ぼすことから問題視されている。近年、この問題となる熱環境を改善するために注目されているのが、日本に昔からある「打ち水」という風習である。東京などの大都市で
はイベントとして大規模な打ち水が行われている。長岡市には冬季の融雪を目的として道路に消雪パイプを敷設している。この消雪パイプは散水型の融雪装置であり、市内に約850kmにわたり設置されている。そこで本研究では、既存のインフラを有効活用の対象として、消雪パイプによる打ち水の大規模な社会実験を行い、その効果や環境影響をさまざまな観点から評価した。
　社会実験は「涼」を届ける消パイ-打ち水大作戦-と題して2011年8月2日～8月6日に長岡駅前市街地に8系列の消雪パイプを稼働させ、約2.6haの道路へ散水実験を行った。社会実験は産・学・官・市民の協力により実施され、気温、湿度、黒九温度などを散水地点、非散水地点で観測した。また、街頭アンケートの実施やブースを出展させ、消雪パイプや打ち水、ヒートアイランド現象に関する資料をもとに市民へ環境問題に関する啓蒙活動も実施した。
　結果として散水地点では非散水地点と比べ気温が約2℃低下し、路面温度は散水前と散水15分後に約16℃低下した地点を観測した。湿度は10％程度上昇する。風速は平均約0.7m/s、日射量は平均約0.6kW/㎡を観測した。また、暑熱環境評価指標の代表的な指標であるWBGT(Wet Bulb Globe Temperature Index:湿球黒球温度)を算出した結果、散水することにより指標で最も熱中症の危険が示される指針が大幅に低下することがわかった。長岡駅前市街地においては融雪時と比べ、約1／10程度の水量、エネルギー量で熱中症患者の発生率を約60%削減できる可能性が示された。特に朝方に実施する打ち水は得られる効果が大きく、夕方はその効果が小さい。日中における社会実験では9割の方がその効果を体感し、消雪パイプを用いた打ち水実施に多くの方に理解を示していただけ、社会実験を実施するための産・学・官・市民の体制を構築することができた。

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