樋口あゆみ

RapidEye衛星画像を用いた津波災害後の海岸林生育状況の時系列把握に関する検討

力丸厚教授・坂田健太助手

2011年3月11日、東日本大震災が発生した。津波によって多くの海岸林がなぎ倒されていることが確認されている。リモートセンシング分野において、可視域(R,G,B)および近赤外NIRの4バンドで海岸林被害状況を解析した研究がなされている。これらのバンドの他に植物の解析に重要なパラメータのひとつであるRed Edgeバンドがある。Red Edgeバンドは運用されている衛星センサが少ない為、Red Edgeバンドを用いた植生の研究は少ない。
本研究では可視域と近赤外及びRed Edgeバンドを有する衛星画像を用い、R, Red Edge, NIRバンドに着目して東日本大震災による津波の影響を受けた海岸林について解析を行った。津波被害を受けた海岸林の生育状況が時系列把握できるか検討した。
解析にはRapidEye衛星のデータを用いた。宮城県名取市を解析対象地とした。観測日が2011年6月3日、7月15日、8月10日の衛星画像を用いた。
今回樹木サンプルはクロマツ、アカマツ、スギの3種類抽出した。比較の為、津波被害を受けた樹木と津波被害を受けていない樹木を抽出した。赤波長Rの反射率が低く、近赤外NIRの反射率が高いことは樹葉のクロロフィルa活性の状態であり、樹木が健康な状態であるといえる。したがってRed Edge及びNIRの値からRの値を引いたその差分で樹木の生育状況が把握出来ると考えた。このことから、(NIR)-(R)と(Red Edge)-(R)による海岸林の生育状況把握を行った。
その結果、クロマツは津波被害によって枯れてきているというスペクトルの徴候が確認された。アカマツは津波被害なしの方が枯れてきているというスペクトルの徴候が確認された。また、津波被害ありの樹木においては津波被害によって観測時期には既に枯れていたことが考えられる。スギにおいては津波被害によって枯れてきているというスペクトルの徴候がみられた。
本研究で、Red Edgeバンドの反射率を用いたことで植生スペクトルの変動が分かった。このことを受けて、R, Red Edge, NIRの情報を用いて東日本大震災による津波の影響を受けた海岸林生育状況の時系列把握の可能性が得られた。

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