塚田千夏

単周波GPS受信機を用いた事後解析処理による低速移動体の高精度測位の検討

高橋一義

 測位航法衛星システム,Global Navigation Satellite Systems(GNSS)の代表的なものとして,Global
Positioning System(以降GPS)がある.GPS受信機には,要求測位精度が数mm~cmの場合にL1・
L2帯の電波を利用する2周波GPS受信機と要求測位精度が数mの場合にL1帯の電波のみを利
用する単周波GPS受信機がある.
 しかし,要求測位精度が十数cmの場合,2周波GPS受信機ではオーバースペックとなり,安
価な測位システムが見当たらないのが現状である.また,単周波 GPS 受信機は,おもにカーナ
ビゲーションなど即時性を求める場合に,単独測位で利用されているが,測位結果に即時性を求
めない状況下では,事後解析処理による干渉測位をすることで測位精度の向上が可能といわれて
いる.
 本研究では,単周波GPS受信機と事後解析処理を組み合わせることで,即時性を求めない状
況下において,どの程度の測位精度が得られるのかを目的とした.そして,静止時における測位
精度を検討するための定点測位実験と移動時における測位精度を検討するための移動体測位実
験を行い,この2つの測位実験の結果から検討を行った.
 まず,定点測位実験では,三等三角点(高頭)を用いてGPSアンテナを2時間静置することで,
三角点の座標との確度と精度を単独測位および干渉測位で比較した.このことから,単独測位
(0.280m)に対して干渉測位(0.127〜1.099m)を行うことで測位精度が向上することがわかった.干
渉測位の中でも,速報値(0.127〜1.099m)よりも確定値(0.169〜0.207m)を用いることで,より測位
精度が向上することがわかった.
 つぎに,移動体測位実験では,台車を移動体と想定して2点間を往復移動させた.そして,二
点間距離と移動軌跡の直線性について検討した.二点間距離では,静止区間においてトータルス
テーションの値との平均絶対偏差を単独測位と干渉測位で比較した.すると,単独測位(0.507m)
よりも干渉測位(0.035m)で精度の向上が望めた.また,移動軌跡の直線性では,移動区間での
RMSEの値を単独測位と干渉測位で比較した.すると,干渉測位(0.034~0.066m)の方が単独測位
(0.272~0.453m)よりも移動軌跡の直線性が高いことがわかった.
 さいごに,静止区間と移動区間を分けるためにビデオデータから,移動した時刻の判定を行っ
た.すると,GPSデータとビデオデータに約15秒の時刻ズレが生じた.再度同様の測位実験を
行っても約9秒の時刻ズレが生じた.このことから,時刻ズレは再現されたがズレ量は一様では
ないことがわかった.
 以上のことから,単周波GPS受信機に事後解析処理を組み合わせることで,測位精度が十数
cm程度となる可能性が確認できた.

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