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地上レーザスキャナの反射強度データ利用の可能性と問題点の検討

力丸厚 坂田健太

3次元レーザ測量は観測対象の3次元座標データと写真データを取得し、高精度かつ3次元的な計測を期待できるリモートセンシング技術のひとつである。この3次元レーザ測量に用いられるスキャナのレーザ波長帯は短波長赤外(1300nmから3000nm)であり、水分があると光を吸収しやすくなる性質がある。
近年では、距離と共に反射強度の計測が可能になり、この反射強度データを用いた土壌水分量の推定などのリモートセンシング計測における利用が期待できる。この3次元レーザ測量には航空機にスキャナを搭載して計測を行う航空レーザ測量と地上にスキャナを据え付けて計測を行う地上レーザ測量の2種類が存在する。小林ら(2005)は、航空レーザ測量反射強度データを用いる土壌水分量推定の可能性を示唆している。この航空レーザ測量では、上空からの計測になるため、観測範囲が広く、観測対象への距離が遠いため、観測対象間の距離や角度が一定とされている。一方、地上レーザ測量では観測範囲が狭く、観測対象への距離が近いため、観測距離や観測角度がデータに大きく影響すると考えられる。そこで本研究では、地上レーザ測量の観測距離および観測角度に伴うスポット径の変化などが反射強度に及ぼす影響を実験で明らかにし、地上レーザスキャナを用いる際に起こりうる問題点を検討することを目的とした。また、レーザの波長帯域が、水の吸収帯域であることに着目し、地上レーザスキャナ反射強度データの利用可能性について検討することも併せて目的とした。地上レーザスキャナ計測の問題点を検討するために、観測距離と観測角度が反射強度データに及ぼす影響を2種類の反射板を用いた反射強度計測実験を行った。また、地上レーザスキャナの利用可能性を検討するため、含水率の異なる土壌サンプルを用いて含水率ごとの反射強度計測実験を行った。
本研究では、地上レーザスキャナの反射強度データが観測距離や観測角度によって減衰することを実験で明らかにした。また、地上レーザスキャナの焦点距離の設定によって反射強度は大きく影響を受けるという問題点も明らかになった。利用可能性については、含水率によって反射強度データが変化することが確認できたため、地上レーザスキャナによる土壌含水率判読の可能性があるといえる。本研究で明らかになった問題点を考慮し、反射強度データを利用することにより、地上レーザスキャナ反射強度データを用いたモニタリングへの利用可能性が示唆される。

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