永嶋希望

MODIS画像の低雲頻度領域抽出による作物の植生指標の時系列変化把握

力丸 厚、高橋 一義   

現在、リモートセンシング技術は土地被覆状況を知る手段として、広い分野で利用されている。
なかでも、植生を対象とする農業リモートセンシングは代表的な分野である。
農業リモートセンシングとは農地や森林を観測対象とし、その状況や変化を捉えることで、農業や林業に役立てるものである。
この農業リモートセンシングでは高い時間分解能で植生の変化を捉えることが重要な要素となる。しかし、上空の雲の影響によって、時系列的な観測が困難なのが現状である。
この問題を受け既往研究者の小林(2011)は、雲域頻度画像を利用して、高い時間分解能でのNDVIの抽出を試みた。雲域頻度画像とは、MODIS画像の雲域を1年間(46シーン)分重ね合わせ、各地点の雲に覆われる頻度を表したものである。
その結果、高い時間分解能でNDVIを抽出することができたが、雨季においてはタイの農地のNDVIを抽出することはできなかった。この要因は、雲域によりNDVIが抽出できていないこと、NDVI抽出領域の設定の際に土地被覆の異なる領域を同一のポリゴン内に含んだことなどが考えられる。
既往研究では水田の形にポリゴンを作成し、その中のNDVI値を抽出した。しかし、この手法だと、NDVI抽出領域に農地以外の土地を含んでいたため、正確なNDVIが抽出できなかったと考えられる。
よって、本研究ではより正確なNDVIを抽出するため、農地領域を特定し、低雲頻度領域と重ねることによって、NDVI抽出領域を設定した。
その結果、雲域頻度画像によって、2009、2010、2011年のタイの雲の少ない領域を特定した。またMODISの8日間コンポジットの画像を用いることで、高い時間分解能でタイの作物の時系列変化を把握した。農地領域を特定し、低雲頻度領域と組み合わせて利用することで、雨季作でのNDVIの変化が抽出できたことは、本研究における成果である。
本研究手法を用いることにより、年間を通しての作物の植生指標の推移を把握することができ、農業分野での活用が期待される。

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