葛谷 春馬



衛星観測データを用いた中山間地の圃場単位での水稲作付け履歴の把握検討



力丸厚教授 高橋一義准教授 坂田健太助手



近年,農業従事者の減少や高齢化による耕作放棄が進んでおり,とくに中山間地域においては耕作放棄が進んでいる.自治体は農協等と協力し作付け状況を毎年記録しているが,実際に記録されたものを実地踏査するのは作付けされた圃場全体に対していくつかを確認するだけに限られている.それに比べ,人工衛星は定期的で空間的に圃場を把握することが可能である.これは農業において広域にわたる農地区画毎の作物生育情報は優位な情報となる.
本研究では,RapidEyeとLandsat7ETM+の観測したデータに農地区画データを反射率に換算して水稲作付け時期の水張りを近赤外バンドの反射率で判別し,繁茂時期のNDVIから区画単位で水稲作付けの判別をおこない,水稲作付けデータによる検証をおこなった.また,2010年?2012年の経年判別結果から水稲作付け履歴を作成し,近年の災害により破損した圃場の復旧状況や放棄地等の圃場を把握できるか検討をおこなった.
判別の結果では,十日町での判別は作付けなしの中には様々な作付けなしのパターンがあり作付けされた圃場と同条件圃場があり誤判別もあった.しかし,松代はその誤判別なく判別が可能であった.また,使用した衛星画像の違いによる判別状況はRapidEyeでの判別は良好であるが,Landsat7ETM+を判別を用いた2010年度の判別結果は分解能が大きいため誤判別が多い結果となった.また,水張り時期の衛星観測時点で水張りがされていない圃場の判別は難しいが,繁茂時期にNDVIが高く作付けされている圃場であれば登熟期の水稲の生育の遅れをREとNIRを使って判別することで判別精度向上できることできることが示唆された.作付け履歴に関しては,2012年に作付けされている圃場は営農可能であると判断できるが,2012年が作付けされていない圃場で,2011,2010年での作付け状況により営農状況を判断可能である.そのため,2010年以降の災害における圃場の状態を判断できるが,2010年以前に発生した災害による復旧状況は判別が困難である.今後,過去のデータから作付け判別を蓄積することで状況判別が容易になると考えられる.

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