高橋美緒
 
雨雪における降水量計の捕捉率補正の式の導出 
 
熊倉俊郎 
 
本州日本海側ならびに北日本では冬期の降水量が多く、また降雪の割合が大きい。よって降水量を正確に把握することが必要となってくる。降水量計を大気中においた場合、受水口付近の気流が乱されるため、降水の一部は測器に捕捉されないという現象が起きてしまう。よって捕捉率補正の式の算出が必要となってくる。横山(2003)によると1993冬期および1997から2001冬期まで6冬期分の観測結果を用いて捕捉損失補正を行い、RT-1 (転倒升式),RT-3(温水式),RT-4(溢水式)と呼ばれる降水量計に適用することのできる捕捉率補正の算出が可能になった。ここで対象としている田村式降水強度計(以下TS-1と呼ぶ)はまだ捕捉率補正の式の導出がされていない為、RT-4降水雨量計の雨量データから横山(2003)の提案した式により真の降水量と呼ばれる値を導出し、それらとTS-1を使用して得られた降水量のデータを比較することでTS-1の捕捉率の式を導出することを本研究の目的とした。本研究では、横山らが捕捉率補正の式を算出した時と比べて、捕捉率の値は大きく、捕捉率が低いという結果になり、RMSE は二倍であった。RMSEが横山らの研究よりも大きくなった原因として、一つ目は、横山らの研究と本研究で使用したデータの降水の切り分け方の違いがあり、本研究の使用データが雪と判別した降水でも雪から途中で雨やみぞれに形状が変化した可能性がないとはいえないことが挙げられる。二つ目は、横山らは大規模な範囲で観測したDFIRから、RT-4の真値を算出するときにも誤差が生じ、それを基に更にRT-4からTS-1の真値を導出しているためそれらの誤差も含まれてしまうことである。本研究では、RT-4の冬期のデータから真値を出し、それとTS-1のデータを比較することで、TS-1の捕捉率補正の式を導出することができ、これにより、今回データ整理をしたデータ以外でも、TS-1で観測した降水量データから、降水量の真値が算出可能になった。また、 捕捉率補正の式の導出に使用するデータは、降水の種別ごとにまとめて観測する必要があること、転倒升付き雨量観測計を使用している場合、降水量が少量な時に注意が必要なことが分かった。

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