ken11602

陸賢

鋼材腐食が生じたプレテンション式プレストレスコンクリート部材の耐荷性能に及ぼす影響

下村　匠
　
劣化した鉄筋コンクリート構造物の耐荷性能についての研究は，これまでに数多く行われてきているが，そのほとんどがRC部材を対象にしたものであり，PC部材の検討例はごく少数というのが現状です．鋼材腐食したPC部材の耐荷性能に及ぼす影響を明らかにするために，プレテンションPCはりを作成し，室内劣化促進試験により鋼材を腐食させたPC部材の載荷試験を行った．計10体の曲げ載荷試験とせん載荷試験を行った後に，試験体をはつり，PC鋼材の腐食状況を実際に確認した．得られた結果より，PC鋼材の鋼材腐食の進行により曲げ耐力と曲げ変形性能の影響について検討した．また，せん断性能が鋼材の鋼材腐食によりどの程度低下するかを評価した．しかし，鋼材の質量減少率を劣化指標とする耐荷力評価では，腐食の程度が大きくなる試験体では，実験値は計算値以上に低下がする傾向がみられた．
そこで，鋼材の断面形状の不均一性を詳細に把握することを試みた．3Dスキャナを用いて鋼材の最小断面積および断面形状を計測した．しかし，鋼材の最小断面積を用いた耐荷力評価でも，腐食の程度が大きくなる試験体では，実験値と乖離がみられた．そこで、さらに電食により鋼材腐食させたPC鋼材を作製し，3Dスキャナを用いて鋼材の断面形状を把握した後，引張試験を行い，引張試験より腐食量とPC鋼材の機械的性質の関係を検討した．試験の結果，鋼材の腐食量以上に強度低下がみられた．
これより，鋼材の機械的性質およびコンクリートの曲げ強度の低下をモデル化することで，鋼材が腐食したPCはり部材の耐荷性能を評価できるか検討した．ここで，腐食したPC鋼材の機械的性質をモデル化することにより，残存プレストレス力を算定する方法を考案した．鋼材の腐食に伴う曲げひび割れ発生荷重の低下は，算定した残存プレストレス力とコンクリートの曲げ強度の低下を考慮することによって，概ね予測することができた．また，最大荷重は，モデル化により鋼材の降伏荷重および最大荷重の低下を考慮することで，質量減少率10%程度以下では耐荷力低下を安全側に評価することができた．

前のページに戻るには"戻るボタン"で戻ってください。