道祖尾 頼夢

耐候性鋼材における濡れ時間判定の検討に関する研究 

岩崎 英治

無塗装で使用可能な耐候性鋼材を使用した橋梁が、LCCを低減可能なことから幅広く建設されている.しかし,一部の耐候性鋼橋梁では,局部的な層状剥離さびやうろこ状さびが発生する問題が生じている.耐候性鋼材の腐食要因として,海岸からの飛来塩分や冬季の凍結防止剤の散布のほかに,桁内の鋼材表面の温度と湿度による濡れなどがある.
濡れている状態の継続時間のことである濡れ時間は,現状,ACMセンサの腐食電流により濡れ状態を評価することが多い.しかし, ACMセンサは,センサの腐食により濡れ状態を評価することから,実橋のさび性状による濡れ時間の差異を測定できない.また,ACMセンサには腐食による寿命があり,長期間での計測では、定期的にACMセンサを交換する必要がある.一方,直流電気抵抗により腐食鋼材の濡れ状態を測定する方法が提案されている.しかし,電気抵抗値は設置の仕方により大きく変動するので,ある値以下というしきい値での評価が難しい.
そこで,本研究では,実橋を対象にして直流電気抵抗を測定し,かつACMセンサおよび温湿度計による計測を行い,直流電気抵抗のしきい値による濡れ判定の妥当性について検討すると共に,濡れ時間の判定基準を検討することを目的とする.また,腐食状況調査も行い濡れ時間と腐食減耗量の関係性を検討した.
本研究で対象橋梁とした小兵衛橋は,新潟平野の離岸距離10kmの場所に位置している.冬季の塩分を含んだ季節風は、橋梁の橋軸に対し斜め方向に吹き付ける.
小兵衛橋に抵抗計測器とテスタ,ACMセンサ,温湿度計を設置し計測を行った.測定期間は,2011年2月1日から2012年の2月23日の期間で行った.また,先端を細くした抵抗計測器を1ヶ月間設置し検討を行った.その結果、鋼材への押し付け強さや接触面積などにより,抵抗計測器ごとで抵抗値が変動することが分かった.
次に、濡れ状態の判定を電気抵抗値のしきい値ではなく,抵抗値の変化量をしきい値として判定を行った.そこから、電気抵抗値の変化量による濡れ状態を判定できる可能性があることが分かった.しかし,ACMセンサと食い違う部分もあった.これは,ACMセンサと抵抗計測器の測定方法による違いが要因として考えられる.

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