弘田 詩織

鋼トラス橋のリダンダンシー評価に関する検討

岩崎 英治

2007年に米国ミネソタ州で当時築40年が経過する鋼トラス橋の落橋事故が発生した.原因は,斜材に接する上横構の一部の部材が動き,構造上不安定になり,ガセットプレートが破壊したことである.同年,日本国内においても,当時築44年である木曽川大橋と当時築41年本荘大橋の斜材が腐食により破断した.しかし,これらは落橋に至らなかった.後者の例のように,橋梁の一部が破断した際においても,橋は崩落に至らない場合がある.このとき,破断部材の断面力が他部材により負担され,構造全体としての余裕が前者と比較し大きかったと考えられる.この差は,橋梁の構造全体における余耐力すなわちリダンダンシーの差である.リダンダンシーとは,橋梁のある部材が破断した際に,その他の部材が断面力を負担することで橋梁全体の崩壊に至らないことであり,構造における余裕のことである.
日本では1970年代~1980年代に数多くの橋梁が建設されたことから,供用年数40年を超える橋梁が近年急増している.一般的に,橋梁の耐用年数はおよそ50年と考えられており,日本国内における膨大な橋梁の質を維持するためには,合理的な橋梁の管理が必要である.
橋梁を均質に評価するためには,橋梁の余耐力を表現するリダンダンシー評価は有用である.しかし,日本においてリダンダンシー評価の標準的な解析手法は確立されておらず,現在リダンダンシー評価解析を行う際に用いられる諸条件は解析者により異なっている.橋梁の評価を適切に行うためには,基準となるリダンダンシー評価の解析手法の確立は急務である.
そこで,本論文ではリダンダンシー解析を行う上で考慮される基本的な条件である,橋梁のモデル,活荷重,部材破断時の衝撃係数の3点に重点を置き,リダンダンシー評価の差違を確かめる.床版の有無におけるリダンダンシー評価の差を明らかにし,解析の際に用いられる適切な活荷重の検討を行う.また,下路式と上路式の橋梁形式が異なる橋において,部材破断時の衝撃係数,活荷重の大きさに着目し,リダンダンシー評価の比較を行い,リダンダンシー解析時の活荷重は,通常の設計時活荷重の50%載荷が妥当であるかを検討する.
本検討では,橋梁のモデル化,形式,活荷重,部材破断時の衝撃係数の違いはリダンダンシー評価にそれぞれ直結することがわかった.正確な評価のためには,対象橋梁の特性を把握し,実情に即したリダンダンシー解析を行う必要がある�

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