ken11502

井ノ川　優美

凍結防止剤による塩害を受けたRC床版の耐荷力評価法に関する研究

長井正嗣

路面に撒かれた凍結防止剤は雨水などに溶けて，その一部は舗装面のひび割れから床版内へと浸透し，鉄筋コンクリート床版（以下，RC床版）の塩害を引き起こす．これにより鉄筋腐食が生じ，鉄筋さびの体積膨張によりRC 床版内部の水平方向のひび割れが発生し，それに伴いアスファルト舗装へのポットホールの発生や，版の剛性の低下を助長する．本論文は，鉄筋コンクリート床版の凍結防止剤による塩害劣化について着目し，劣化した鉄筋コンクリート床版の性能を荷重-たわみ関係で評価する．
塩害劣化した実RC床版を静的載荷試験し，曲げ耐荷力と押抜きせん断耐荷力を把握する．この試験により，塩害の劣化状況を耐荷力や，荷重-たわみ関係を整理し，松井らの推定式と比較することで劣化による耐荷力への影響を考察している．更に，鉄筋腐食に伴う，鉄筋部のコンクリート劣化の影響を把握する目的として，コンクリートのヤング係数をパラメータとして解析を行う．また，実RC床版の静的載荷試験では，その耐荷力がコンクリートと鉄筋の付着に影響されることも考えられたため，鉄筋の腐食と付着力の関係を調べる基礎試験を行なっている．基礎試験では鉄筋の径・ふしの有無，鉄筋の腐食，腐食によるひび割れ，腐食物質の付着を調べている．最後に，凍結防止剤による塩害劣化を受けたRC床版の耐荷力に何が最も敏感に影響するかを明示し，実RC床版のたわみを評価する．
本研究から得られた知見を以下に示す．
RC床版下面がはく離した実RC床版は，曲げ耐荷力・押抜きせん断耐荷力は，共に低下する．
劣化した実RC床版の曲げ耐力・押抜きせん断耐荷力は，共に劣化形態で破壊状態が変化する．
押抜きせん断試験において松井らの推定式は健全なものと一致する．
上面はく離の面積率が40%の場合，ひび割れ角度を考慮した修正式を用いることにより押抜き試験値に近い値が得られる．
解析においてコンクリートヤング係数を健全時における上面鉄筋部周辺は0.4倍，下面鉄筋部周辺は0.6倍に劣化を生じさせると，上面劣化のみの場合と比べその曲げ耐荷重は1.2倍、たわみは1.3倍増加する．
腐食による鉄筋断面減少率が15％の場合，ふしがない状態の付着応力の挙動に近くなる．
床版に対し水平方向のひび割れを模擬した場合，健全なもののすべり量の1/5倍で破壊に至る．　
塩害により劣化したRC床版のたわみは，鉄筋腐食によるコンクリートの劣化やコンクリートと鉄筋の付着力を考慮することで評価できた．今回は載荷試験による検討であったため今後，実橋におけるRC床版で評価できるようにすることが課題である．

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