中村浩士

礫混じり砂のせん断剛性と液状化強度に与える礫分の影響

豊田浩史

液状化判定業務では,ボーリング孔を用いたPS検層が広く用いられている.この試験から得られるせん断波速度VsはN値や土の物性値と関係性が高いパラメータであるため,その関係を活用した地盤の健全性評価システムの開発が進められている.調査対象地盤において原位置の液状化強度を求めるためには不攪乱試料を凍結サンプリングする必要がある.他のサンプリング方法では,運搬時の乱れの影響を受けてしまうため,室内試験で求まる変形係数はPS検層で得られるそれと比べ小さい値を求めてしまう.そこで本研究では,年代効果や乱れの影響を受けない理想的な状態として,室内で砂に礫を混ぜていくことで供試体を作製して,Vsを求めることができるベンダーエレメント(BE)試験と,変形係数が得られる微小ひずみ測定(LSS)試験を行った.ここでは,礫分含有率の増加と過圧密比(OCR)が液状化特性に及ぼす様々な影響を調べるために,波動伝播特性と微小変形特性に着目して,実験的検討を行った.本研究で得られた結論を以下に示す.

(a) 礫質土の液状化特性
1.礫分含有率が0%〜20%までの範囲では,液状化に至るまでのひずみの進展,繰返し載荷回数ともに,ほとんど変化しない.礫分が質量で30%を越えると,液状化強度が急激に増加することから,礫分含有率がある範囲を越えると,液状化強度に対して礫分が大きく依存してくると言える.
(b) 礫質土の波動伝播特性と微小変形特性
1.OCRがせん断弾性係数G0に与える影響をBE試験およびLSS試験で検討した結果,両試験共にOCR=1〜4ではG0に明確な違いは見られなかった.このことから,OCRがG0に与える影響はほとんど無いと言える.
2.BE試験とLSS試験で求まるG0,礫分含有率Gc=30%までの範囲では等しい増加を示した.しかし,礫分含有率がさらに増加すると,BE試験結果の方が大きい値を示した.
3.礫分増加によるG0の変化は,同一試料に対して用いられている間隙比の補正式を用いると説明できた.これにより,礫を含まない供試体でG0を求めれば,礫を含んでいても地盤の間隙比を求めることで,原位置のG0を推定することが可能性である.
(c) 波動伝播特性と微小変形特性が液状化特性に与える関係性
1.液状化強度は,せん断ひずみ0.003%程度のひずみレベルの割線せん断弾性係数と良い相関性があるといえる.つまり,この割線せん断弾性係数から液状化強度を推定することができる可能性がある.
2.液状化強度と排水強度の関係は,礫分増加に対して直線的な増加傾向を示した.しかし,過圧密履歴を加えた供試体の液状化強度には,排水強度との関連性は見られなかった.

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