澤田 命
マルチエージェントシミュレータによる河川氾濫に対する避難シミュレーション
細山田 得三
人が生活するうえで欠かせない水資源のひとつとして、河川がある。河川は飲料水や生活用水といった物を提供してくれる一方、住民に対して脅威になることもある。その例として、平成23年7月新潟・福島豪雨により両県は甚大な被害を受けた。またこれ以外にも平成10年8月新潟豪雨や平成16年7月新潟・福島豪雨が発生しており、豪雨による河川の氾濫で人々の生活が脅かされている。こういった背景から、行政はいつ起こるかわからない災害に備えてハザードマップなどを作成している。しかし、ハザードマップのような被害予想図は単にその被害を受ける範囲や避難場所を図示しているだけで、すべての人が迅速かつ安全に避難できることを保障するためのものではない。どの範囲まで被災するかは理解できても、災害発生から事態が収束するまでの間にどのような変化が起きるか、といったことまで想像することは難しい。このことから、誰もが理解できるように視覚に直接訴えかけるようなハザードマップが必要となる。それを可能にしてくれるものが、人々によって長い年月をかけて育てられてきたIT技術である。現在ではその甲斐もあってか誰もが使えるようなシミュレータも開発されている。浸水状況をアニメーション化することによって、その一挙一動を容易に理解することができる。そうなれば避難の際にある程度の予測を立てることが可能となり、より的確な行動をとることもできるだろう。本研究ではマルチエージェントシステムと、航空写真によるリアリティのある地図を提供しているGoogle Earthを用いて、避難行動の手助けとなる浸水状況のアニメーションを作成した。
作成したシミュレーション・モデルで氾濫解析の過程を取り込み実行した結果、避難者として行動するエージェントと浸水過程の様子を画像ファイルとしてステップ毎に出力することができた。また対象とした河川に対して2つの避難所を仮定し、その被害率を比較することによってどちらの方が今回の氾濫に対する避難所として適しているかということも検証した。刈谷田川の場合、保育園が37.4%、庁舎が45.8%と避難所として適している場所は保育園となった。柿川の場合、博物館が16.3%、シティホールの場合が44.2%と避難所として適している場所は博物館となった。ただ、これらの結果はあくまで今回の氾濫解析にのみ有効であり、一概にこの避難所がよいという決定を下せるわけではない。しかし、限定的な条件下でも最適らしい解をそれぞれの避難者が導き出したということで避難の目安のひとつとなりえるのではないかと考えている。
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