杉原隆央

仙台湾周辺海域における表層付近の流動機構について

細山田 得三

四方を海に囲まれている日本は総延長34,000kmにおよぶ海岸線をもち、多様な生物生態系を維持している.しかし、その一方で,人間活動に伴う地球環境の変化,特に地球の温暖化が問題になりつつあり,これにより海面が上昇し,沿岸の様相が大きく変化する事も懸念されている.また産業の発達による海洋汚染が進み、海岸には大量のゴミが流れ着くようになり、船舶事故などにより油や化学物質が流出するなどの海洋汚染が続いている.このような問題と直面する中で、近年では海洋環境を保全し,海洋災害を防止しながら今後とも沿岸海洋の生産性を維持・向上させる努力をする事が必要になりつつあり,そのためには対象海域での諸過程を明らかにする事が極めて肝要であると考えられる.この対象海域における諸過程を明らかにするためには海水の物理的特性,すなわち海水の流動機構を把握する事が必要となる.
仙台湾沿岸は、宮城県牡鹿半島先端の黒崎から福島県相馬市の茶屋ヶ岬にいたる太平洋に面した海岸である.特に仙台塩釜港仙台港区から相馬港に至る海岸は、東北地方では数少ない長大な砂浜を有する海岸であり、サーフィンなどが盛んに行われる東北きっての重要レジャー地域と言える.また、仙台塩釜港は東北で唯一の特定重要港湾であることなど商業的にも東北を代表する重要な拠点である.工学的見地から見ても親潮や黒潮、対馬海流などの多くの海流の影響を受ける地域であり、季節変動の大きい地域と推測することができる.
仙台湾沿岸においてはレジャー開発、工業開発等により、汚染物質の拡散や波によって打ちあげられたゴミが海岸に多くみられる現状が以前より確認されていた.これらのゴミの多くは流木や海草などであるが、ビニール袋やペットボトルなどの容器類も少なくなく、仙台湾沿岸域における大きな問題となっていた.
このような問題を解決するために本研究では平面二次元多層モデルを用いて、海の流れに影響を与える、海流、吹送流、潮汐流の要素を勘案した仙台湾周辺海域の流動機構を明らかにすることを目的とした。またこれらの諸条件は季節によって変動するものであるため、本研究では夏(7月から9月)と冬(12月から2月)の2季節における各種データを解析することでより詳細な流動機構を明らかにした.
また解析結果を利用して、仙台湾周辺海域における浮遊ゴミを仮想した粒子追跡と汚染水の拡散計算を行った.その結果として仙台湾周辺海域における浮遊ゴミの浮遊挙動と拡散傾向を明らかにした.

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