沓掛 亮太

建設構造物に作用する津波力について

細山田 得三

わが国は太平洋プレート境界である環太平洋地震帯に位置しているため,地震や津波が数多く頻発している.沿岸部では数多くの津波被害が報告されており,その歴史は684年まで遡る.1960年にチリ沖の大地震によって引き起こされた津波が太平洋を横断して到達し,太平洋沿岸の三陸海岸や四国海岸に大きな災害を発生させた.この津波は遠隔地から伝播してきたために非常に周期が長い特徴を有していた.この津波を契機として,湾後部に開口幅の狭い防波堤を建設して津波を防ぐ方法を取られるようになった.
津波の波力は海岸堤防の被災要因の一つであり,その照査方法の確立が望まれている.現在,津波の衝突が予想される港湾施設については,設計する際に津波による影響を考慮する必要がある.その際には港湾基準式により津波波力を与えてよいとされている.
 スマトラ沖地震以降,インドネシアやスリランカの沿岸部に架けられた河川橋梁が多数,流出しこともあり,それ以降,河川を遡上する津波による橋桁への作用波力の検討も行なわれている.橋梁を設計する際の津波対策として,津波の陸上遡常時の構造物に作用する津波力について把握することは重要である.しかし,橋梁と津波の相関関係に着目した研究は未だに不十分である.
 本研究では数値モデルを用いて浅水波計算により海岸構造物や道路の盛土の嵩上げなどによってどの程度津波の遡上を阻止することができるか検討した.またナビエ・ストークス方程式の直接計算を用いて建設構造物に作用する津波力について検討した.入射波条件は東日本大震災発生時に気象庁が観測した潮位データを用いた.また,地形条件は東日本大震災の際に被害のあった沿岸地形を再現した.一般的な海岸のように海底勾配が緩い場合,海岸が比較的な急になっている場合,港のように陸上と海上の境界の水深が深い場合の3ケースを再現し数値計算を行った.また数値計算で求めた波圧と港湾基準式によって求めた波圧を比較し検討した.結果として,全てのケースにおいて数値計算により求めた結果が港湾基準式で求めた結果を下回った.よって橋脚のような構造物に作用する津波波圧は港湾基準式により安全側に評価できることがわかった.

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