藤澤 誠二

中越地震における地震地すべりの発生要因の分析と地震地すべり危険度評価

大塚 悟

中越地震は中山間地で発生する大規模地震の典型事例として位置づけられており,地すべりや斜面崩壊に関する研究はこれまでも多くの報告がなされている.しかしながら,これらの研究成果の共通事項として中越地震により崩壊した斜面の情報のみを使用しているという点が挙げられる.崩壊斜面情報のみの分析では,地すべりの要因の傾向をつかむことは可能だが,地すべりの発生要因を明らかにすることは困難である.そこで本研究では,地すべりが発生しなかった斜面の情報も含めて,地すべり発生要因に関連する情報のGIS上への整備を行い,地すべりにおける要因を評価した.地質構造データなどの整備の際は,予測モデルの開発を行い,その妥当性の検証も行った.地すべり要因の統計分析の結果,地すべりの発生しやすさを地すべり発生率という客観性のある数値として示すことが出来た点に本研究の特徴がある.また,地すべりを発生率で評価したことで,従来の分析よりも,より詳細で発展的な分析の実施が可能となった.
1つ目の成果は,表層崩壊の発生率の逆算による地震動の分析である.表層崩壊の発生率は,震源断層線からの距離と傾斜角度により決められるという仮定を立て,長大斜面の安定解析による評価を行い,表層崩壊の発生率から震度係数の逆算を実施した.その際,崩壊事例による発生率を,強度のばらつきを考慮した破壊確率として評価した.震度係数決定の際は,傾斜角度毎の誤差が最小となるように求めた.結果として逆算震度は,震源断層付近で0.28〜0.26,震源断層から6kmの地点では0.13〜0.12が得られた.また地質による風化土の一軸圧縮強度の変化について比較した結果,地質により多少の差は有るものの,地質全体の一軸圧縮強度との差異は小さいことがわかった.
2つ目は,対象地域における地すべり危険度評価モデルの提案である.地すべりにおける各要因の発生率に基づき,それぞれの影響度を重回帰分析により評価した.また定量的に表される要因については関数モデルを採用することで,予測モデルとしての汎用性の高い地すべり危険度モデルを提案した.地すべり危険度評価モデルを素因のみで提案することで,地震後の将来的な地すべり危険度を評価も可能となり,対象地域の現況における地すべり発生危険度評価についても実施した.その結果,対象地域において,今後の防災対策に役立つ指標を提案することが出来た.

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