友渕 真寛
沖積粘性土地盤の地震による長期地盤沈下の素因に関する実験的研究
大塚悟,磯部公一
2007年7月16日に発生した新潟県中越沖地震は,マグニチュード6.8 ,最大震度6強を記録し,各地に深刻な地盤災害をもたらした.特に砂丘地帯や旧河道における液状化などの砂質土地盤の被害が顕著であったため,軟弱粘土の広がる柏崎平野での被害は相対的に軽微とされ,大きく取り上げられることは無かった.ところが新潟県による経年地盤沈下観測により,柏崎新橋地区において長期にわたる地盤沈下が生じていることが明らかとなった.
この原因を調査するため,本研究では地震後に観測された長期継続大沈下現象を解明するために,観測地点脇でボーリング調査を行い,任意の各層で採取した試料を用いて室内土質試験と微化石総合分析を行った.続いて室内試験結果から地盤のパラメータを求め,土・水連成弾塑性有限要素解析により,地震時の過剰間隙水圧の再現および今後の圧密沈下量予測を試みた.
その結果、新橋地区をはじめとする柏崎平野は,元々地盤沈下を起こしやすい軟弱な沖積粘性土が広がっていたが,中越沖地震前に沈下を起こしていた部分は地表面付近の粘性土層(陸成粘土)だった.しかし中越沖地震によって強力な加速度が解放基盤から伝わると,これまで深刻なダメージを受けたことが無かった柏崎平野深部の海成粘土層が大きなせん断変形を受けた.これにより海成粘土層は構造を喪失したことで,圧縮による過剰間隙水圧上昇が発生し,以降,徐々に消散させながら現在も圧縮が続いていると考えられる.
沈下現象が長期にわたる原因は,現地盤の透水性が低いことによって過剰間隙水圧の消散が遅いことが大きいと考えられる.
これらの理由によって,柏崎平野内で地震後沈下量の分布に偏りがあったことも,構成する粘性土の違いと,層厚の大小が関係していたと考えられる.
また増幅により加速度が大きくなる陸成粘土での過剰間隙水圧の上昇が低かった理由として,解析結果については地表面の過圧密比が高かったことが原因と考えられ,実地盤ではそれに加え,毎年の地下水位の変動による過圧密発展の影響が考えられる.
沈下量に関して,今回の解析結果と実測値がそれほど一致せず,過小評価してしまった原因としては,解析の簡略化や実地盤中の砂層の介在など,原因は多く考えられる.しかしながら,最終的な総沈下量自体が異なるのか,収束までの経路が異なるのかは,まだ判別できるほどの時間が経っていないので,継続して観察を続ける必要がある.
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