ken11204

木村　泰之

分割法による土構造物の地震時簡易残留変位量算定法の開発

大塚悟，磯部公一

近年，大規模な地震が頻繁に発生している．2004年の中越地震をはじめ，2007年の能登半島地震，2011年の東北地方太平洋沖地震が挙げられる．よって，土構造物の設計時にレベルⅡ地震動を考慮する必要性がある．しかし，全ての土構造物に対してレベルⅡ地震動での安全率を1.0以上に設計することはコスト高となる．そこで，大規模地震に対してはある程度の損傷を許容することが合理的であると考え，土構造物の耐震性評価に残留変形量照査の導入が重要視されている．斜面の安定解析は分割法に代表される極限平衡法が幅広く用いられてきた．この方法の特徴は地盤中に種々のすべり面を仮定し，すべり面によって区切られた土塊の変化を簡易に解析することが可能である．本研究では，地震時の土構造物の残留変位の簡易予測手法の開発とし，剛塑性理論に基づいた分割法を用いる方法を提案する．剛塑性構成式を適用させるメリットとして，自重過多による自壊モードの表現が可能となることである．解析プログラムを作成し，その適用性をPower SSA Proと比較する．また，小型模型実験，大型模型実験，2011年の東北地方太平洋沖地震で被害を受けた福島県会津若松市一箕中学校での盛土崩壊の解析を行い，実現象への適用性を検証し，以下の結論を得た．
1) Newmark法と比較をした結果，本手法で適切に変形問題を評価できることが分かった．また，本手法の特徴である，自壊モードの確認もできた．
2) 小型模型実験との比較から，変位発生のタイミングを本手法で再現できることを確認した．
3) 不規則波を規則波に換算する手法を用い，全応力で液状化を考慮することを提案した．解析の結果，液状化後の強度をN値から予測することで累計変位量は実被害とほぼ一致した．

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