バダムドルジ オンドラッハ

ウランバートル市の通勤通学における交通行動分析

佐野 可寸志

現在モンゴルは首都ウランバートル市への一極集中が激しく、この10年間で人口1.5倍、自動車数4.5倍増加している。一方、中心市街地はその地勢に伴い主幹線道路ピースアヴェニューに沿って東西に拡大している。そこで、この地勢を最大限に利用した交通政策が必要と考えた。より低コストで高効率的交通システムとして、ウランバートル市の主幹線道路にバスレーンを導入する事を提案し、その時の通勤通学者の交通手段変更について確認する事を目的とし本研究を進めた。そこで、まず市内の通勤通学者を対象にアンケートを配布し、81%の回収率で324サンプルを集めた。まずアンケートデータを単純集計した所、運転免許保有する回答者の50.1%もが通勤通学手段として公共交通機関を選択するなど、公共交通の利用率が非常に高い事が分かった。また回答者別に最短距離と現況バスルートで予測選定した結果、主幹線道路の使用率がそれぞれ67%と50%と多くの回答者が主幹線道路を通過しているという事が分かった。実際、現況バスルートの8割以上が主幹線道路を通過している。 その後、アンケートデータを基に交通手段選択モデルを構築した。その結果、尤度比0.4のヒット率67%の良精度のモデルを構築する事ができ、そのパラメータ値から通勤通学者の時間価値が80[円/時間]と高い事が分かった。だが、日本のそれと比較すればまだ7倍も低い事になる。これに加え、市内の通勤通学者は交通費用より所要時間を重視し、所要時間が交通手段選択率に大きく影響している事が分かった。その後、推計結果から得られたパラメータ値を用い、バスレーン導入時の通勤通学者の手段シフトを確認した。データセットとして主な3手段(車、バス、ミニバス)にバスレーンを追加する時、バスレーンでの所要時間は通常バスの主幹線道路走行時間より5分は速く、また料金は現在のバスと同じく400[トグリグ、T](1T〜18円、2012年1月)と設定し、構築した交通手段選択モデルを適用した。その結果、通常は自動車を通勤通学手段として使用する人の16.7%がバス利用へと手段変更するだろうという事が分かった。バスは車より環境にやさしいとされるので、主幹線道路でのバスレーン導入はウランバートル市の持続可能な都市発展を大きく促進させるものと思う。

前のページに戻るには"戻るボタン"で戻ってください。