佐藤雄太

高速道路の線形が交通事故に与える影響

佐野可寸志

高速道路は,勾配やカーブを一般道に比べ緩和させ,基本的に時速100キロメートルもの速度で走行が可能であり,一般道に比べ事故が起こる確率が10分の1と安全である.しかし,高速で走る以上,事故が起きれば規模が大きなものになる.本研究では,高速道路における事故を,線形などにより分析し,また脳波を用いて高速道路を運転中どこに注意を向けているかなどにより,事故と線形の関係を調べ,事故を一つでも多く減らすためには,どのような対策を練ればいいかを,ソフト・ハード両面から検討することである.
本研究ではH14年からH18年までの,新潟県内の高速道路における人身事故データをもとに事故の特徴を分析した.まず初めに事故率を求めた.その事故率をもとに線形による分析を行った.また,線形に因らないものとして,気象条件や路面条件,年齢などの要素を用いた分析やNSM(Network Safety Management)による区間評価を行った.また,脳波の実験は,実際に被験者が,測定機器を取り付けた状態で高速道路を走行し,脳波を分析することでどのような線形や気象条件が運転手の負担となるかを調べた.
その結果,晴れの日・乾燥路に死亡事故が多く,雪の日・積雪路では軽傷事故が多く発生していること.NSMによる区間評価では,交通量が多い2車線区間のカーブや勾配の厳しい区間,比較的交通量の多い対面通行(暫定2車線)区間およびストレートがひたすら続くような区間を重点的に改善するとよいことが分かった.脳波を用いた分析では,上り勾配,下り勾配,左カーブ,右カーブ,事故率は脳波の周波数に大きな影響を与えているわけでもないことが分かった.また夜間は昼間より影響を与えにくいことも分かった.これは,夜間ではライトの明かりだけで走行するため,勾配やカーブが分かりにくい上に,冬期間では路面の凍結なども見分けがつきにくいことから,全般的に危険を察知しにくく,常にβ波高い状態であるからだと考えられる.
これらより事故が起こりやすい要素はあると考えられる.しかしすべての事故が,線形が原因で起きているわけではない.あくまでも線形は一つの要因でしかない.交通事故というのは不注意が重なって呼び起されるものである.これをゼロにすることは不可能である.しかしドライバー一人一人が意識して注意すれば減らすことは可能である.その為にも啓発活動や取締活動などのソフト面をより一層充実させていくことで,高速道路の事故防止により一層つながるのではないかと考える.

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