佐々木 拓也

新潟県地域間産業連関表による観光関連施策評価

佐野可寸志、土屋哲

現在地域経済活性化のために様々な観光関連施策が行われているが,これらの影響については地域単位で詳細に分析してはおらず,各地域にどれほどの効果があるのかを詳細に把握はできていない.本研究では地域経済分析に優れた産業連関表を応用して地域間産業連関表を作成して観光関連施策が各地域に与える効果を詳細に分析し施策の評価を行う.
観光関連施策については,本研究では2011年6月まで行われた休日特別割引について施策評価を行う.分析の流れは,休日特別割引による,県内各地域への影響を誘発需要分析モデルと地域間産業連関表を基にした地域間産業連関分析によって明らかにし施策評価を行う.
誘発需要分析モデルは,ミクロ経済学における家計の消費理論を応用し,家計の観光行動を効用最大化問題として定式化する.地域間産業連関表の作成は,新潟県の産業連関表を基に既存の統計資料で按分し作成する.
作成した地域間産業連関表から下越地域は移輸入超過により年間約2300億程度損失を出し,県外・国外からの輸入に頼った経済だということがわかる.また魚沼地域では,移輸出により400億円以上の黒字をだし,移輸入率も低いことから地域内の生産力が高く商売上手な経済体質であることがわかった.
休日特別割引による観光増加者の推計結果は,新潟県全体で,719,307人/年増加と推計された.これは推計の基データの全国幹線純流動調査(2005年)による新潟県への観光者数,1,100万人の約7%にあたる.また自動車による観光増加者数は,497,115人/年増加と推計され,この結果から休日特別割引により旅行回数が増加するなど家計の選択行動に大きな影響を与えた.地域別では,下越地域は娯楽施設が充実しており県内経済の中心である新潟市の影響から県内観光客が多い.反対に魚沼や佐渡地域では県外観光者数の占める割合が高く,経済基盤や交通サービスが劣りながらも,県外から多くの観光者が訪れるのは観光地としての魅力が高い地域といえる.中越地域の総増加者数は下越地域に次いで2番目となっているが,県外観光者の増加数が県内で一番少なく,経済波及効果は高くない.この結果から経済波及効果は県外観光者を取り込むことが重要ということがわかった.
地域間産業連関分析による休日特別割引実施時の経済波及効果は,約273億円増加した.休日特別割引は観光回数を誘発し地域経済活性化に一定の効果があるといえる.しかし経済波及効果の内訳をみると波及効果額は各地域で半分近く他地域へ流出してしまう.休日特別割引は観光誘発や経済効果による地域活性化対策としては高く評価できる.しかし,受け入れる地域経済が観光による費用を自地域に還元できるシステムを作らないと地域活性化対策としての効果は得られない.

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