kan11202

大崎裕司

農地区画単位による作物生育状態把握手法の検討　

力丸厚　入江博樹

　衛星データにより農地の作物生育状態を把握するには，空間分解能が高く観測バンドが多いセンサが好ましい．Landsat7衛星のETM+センサは，可視域から近赤外域のバンドを持ち，空間分解能30ｍで地上を観測できるが、Landsat7衛星は16日に1度しか同一地点を観測できないため，雲に覆われていないデータの取得が難しく，作物生育状態を継続的モニタリングするにはETM+センサだけでは難しい．一方で，Terra衛星とAqua衛星に搭載されたMODISセンサは，同一地点を毎日観測しているため，時間分解能に優れている．しかし，MODISの空間分解能は250ｍと低く，1つのピクセル中に農地や道路などの反射率がミクセルしているため，農地を詳細に解析できない．
　そこで本研究では，農地区画のGISデータを作成し，MODISデータを農地区画単位の情報に算出することにより，作物生育状態を区画毎に把握する手法を検討する．日本の様に小さい農地の解析は難しいため，オーストラリア南部における農地を対象に比較検討を行った．空間分解能が高いETM+データとMODISデータの解析結果を比較し，農地区画データを用いることによって，どの程度の広さの農地まで精度よく作物生育状態を把握することができるかを検証し，また，MODISデータの熱赤外バンドを用いて，地表面温度の立ち上がりを把握することによって，農地の干ばつ状態把握について検討した．
　検証の結果、農地区画の面積が1k㎡以上の農地であれば、農地区画データを用いることにより、MODISデータから作物生育状態を精度よく把握することができることが分かり、農地区画毎に植生指標の推移を算出することで、季節毎の作物生育状態を捉えることができた．また、MODISデータの熱赤外バンドを用いて農地区画毎に精度よく地表面温度を算出する場合は、農地区画面積は2k㎡以上必要であることがわかった．熱赤外バンドから干ばつの被害を受けた農地の地表面温度の立ち上がりを調べたところ、地面が乾燥していると思われる農地では地表面温度の立ち上がり方に傾向があることがわかり、農地の干ばつ状態を推定することができることが示唆された．

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