佐藤 巧
空間的に加熱される雲型プルームの流体力学的挙動
陸 旻皎,楊 宏選

近年多発する集中豪雨の発生源である積乱雲において,現時点で生成過程における熱力学特性は大分詳細に解明されているが,周囲空気との混合プロセスや連行特性などの流体力学的挙動はあまり知られていない.しかし,これらは積乱雲の規模(幅,上昇高),降雨強度等につながる重要な要素である.密度噴流とは噴出口(ソース)から運動量(流速)と密度差が連続的に供給され,周囲流体を連行しながら混合拡散する煙の様なものをいい,密度差のない流れはピュア噴流と呼び,逆に密度差のみを有する流れはプルームと呼ばれている.
周囲流体から噴流流体へと巻き込む強さを表す指標である連行係数はプルームが0.085程度,噴流が0.057程度であり,密度差(浮力)の存在が連行を強くする効果があることは従来からの共通認識であった.しかし,水蒸気が凝結する過程に放出される潜熱に加熱されながら上昇する積乱雲は周囲からの連行がほとんどない事実もあり,空間的に加熱されるプルームは連行が小さくなることを実験で示した研究が複数あった一方,逆に大きくなる結果を示した研究も複数存在する.これは実験と計測の難しさによる精度低下に起因すると思われる.
本研究は拡散空間で得られた浮力と連行の関係を数値実験にて調べることを目的とする.実験で噴流を選別的に加熱する仕組みは難しいが,数値流体力学においてはエネルギー方程式に熱源項を加えるだけで実現でき,比較的容易に行うことができる.加熱・計測装置が流れを影響することもない.まず,空間的に加熱を行った噴流(加熱噴流)があまり特性が知られていなく,数値計算の結果の信憑性を評価するために,ある程度特性がわかっている噴流及び密度噴流の数値計算を行ってその計算結果の信憑性の評価を行ってから定性的な評価を行った.
また,一般的に自由せん断流において,せん断層に集中する渦がKelvin-Helmholtz不安定により螺旋状に巻きあがり,渦輪(軸対称噴流)・渦対(二次元噴流)が形成されるが,この組織的渦構造が噴流・プルームの連行メカニズムに支配的影響を与えるとされている.そこで,噴流,密度噴流,加熱噴流に似せて渦対を放出する数値実験を行い,進行拡散する渦塊に着目して渦塊半径及びその半径を通る流量を算出し,主流軸方向いおける流速,トレーサー濃度,温度分布及び噴流流体の挙動そのものも含めて連行の増減に関して考察を行うことで噴流・渦対における浮力の影響を調べた.

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