鈴木 沙友里

新潟県内自治体における小規模橋梁の維持管理に関する実態と問題点の解明

下村 匠

我が国では,高度経済成長期に橋梁などの構造物が集中的に整備されたが,建設後50年を超える構造物が増加する時代を迎え,構造物の維持管理を効率的に行う必要性が高まっている.道路橋梁においては,建設後50年以上を経過する橋梁は全体の約8%であるものの,10年後には約25%,20年後には約51%にまで増加する.これを受け、国から地方自治体に橋梁長寿命化修繕計画の策定が求められた。しかし,地方自治体では,小規模で多数の橋梁を管理する現状や,限られた公共事業費の中から維持管理費を賄う予算不足の問題,専門知識のある技術者が不足しているなど,様々な問題を抱えていると考えられる.

本研究では新潟県内の自治体における橋梁維持管理の現状を調査し,その結果を,技術面,制度面から分析考察を行い,今後の課題を明確にすることと,有効な方策を提案することを研究目的とした.
調査方法はアンケート調査,ヒアリング調査,現地調査の3つである.アンケート調査は新潟県内の全30市町村と新潟県庁へ送付した.ヒアリング調査は,アンケートの回答があった2つの自治体に実施した.現地調査は実橋梁について,目視できる範囲で床版や橋脚を調査した.

アンケート調査とヒアリング調査によって明らかになった実態は,予算不足,技術者不足,技術力不足がある.予算不足の要因は,自治体の予算全体が縮小しており,インフラに割ける予算も少ないこと,交付金が利用したい事業に配分できないことが挙げられる.技術者不足については,維持管理に携わる職員あまりにもが少ないことが要因となっている.技術力不足については.技術的業務を民間企業に委託していることや,職員の能力向上のための制度が不十分であることが挙げられる.また,現地調査と長岡市に対する再ヒアリングを行い,現在の市町村の維持管理を困難にしている原因として,国から市町村へ移管された橋梁の存在があると推測した.国道などとして利用されていた橋梁が,市町村へ管理が移されたことで,市町村の維持管理を圧迫しているのではないかと考えた.移管された橋梁の数や,劣化状況については現在調査中で,今後の研究課題である.

自治体と国の今後の方策については,まず自治体の方策として,重要度の高い橋梁を選択し,集中的に予算を配分すること,予防保全的な補修を計画的に行うことや,職員の中途採用枠を拡大し,民間企業から技術力の高い人材を登用することが挙げられる.国の方策としては,技術支援によって技術力の向上に寄与することや,財政支援を行うこと,市町村に移管した管理の難しい橋梁について,管理方法の模範的な例などを提案するなどのサポートをしていくことが必要である.

前のページに戻るには"戻るボタン"で戻ってください。