ken10602

神田　麻衣子

乾湿に伴う骨材の収縮特性がコンクリートの乾燥収縮に及ぼす影響

下村　匠

コンクリート構造物の劣化現象の一因である乾燥収縮は，コンクリートの耐久性の低下に大きな影響を与える．コンクリートの乾燥収縮に最も影響を与える要因の一つが，骨材の品質である．特に，骨材の静弾性係数および乾燥収縮量が，コンクリートの乾燥収縮と高い相関を示すことが知られている．したがって，骨材の収縮特性を適切に評価することや，骨材の収縮特性がコンクリートに与える影響について検討を行うことの意義は大きい．そこで本研究では，種々の骨材の水分逸散および収縮特性を適切に評価し，コンクリートに与える影響を明らかにすることを目的として実験的な検討を行った．また，乾燥収縮量が比較的大きい骨材（以下，収縮性骨材と記述）を用いた場合に，コンクリートの収縮にどのような影響を与えるのかを明らかにすることを目的として，実験的な検討を行った．さらに，骨材－ペースト直並列二相複合構成モデルに基づきペーストと骨材の複合関係を考慮し，骨材の弾性係数，収縮特性，水分逸散特性の影響を検討した．
収縮性骨材単体の収縮量測定を実施したところ，収縮性骨材は一般的な骨材と比べて収縮量が非常に大きいことが確認された．また，収縮性骨材を用いたコンクリートは，普通コンクリートに比べて自由収縮量が大きくなり，ひび割れ抵抗性が低下することが明らかとなった．そこで，種々の骨材を用いたコンクリートの乾燥収縮試験を行った結果，収縮性骨材を用いたコンクリートの乾燥収縮量は，弾性係数が同程度の他の骨材を用いたコンクリートと同等の収縮量であった．また，実際のコンクリート中の環境下を模擬して乾燥収縮試験を行ったところ，収縮性骨材の収縮量が半分以下となった．したがって，非常によく縮む骨材でも，実際にコンクリートに用いた場合，収縮量はそれほど大きくならない場合もあるといえる．
複合モデルを用いてコンクリートの乾燥収縮量の算出を行った結果，骨材の収縮量として，水に浸せきさせた後，乾燥収縮を行った場合の試験値を用いると，コンクリートの収縮が過大に評価されてしまうことが明らかとなった．しかし，コンクリート中を模擬した試験体の収縮量を骨材の収縮量として用いると，複合則によって得られた値と実験値が同程度となった．したがって，コンクリート中での骨材の収縮量として適切な値が得られれば，収縮性骨材を用いた場合であっても，既往の複合モデルによってコンクリートの収縮が評価できる．

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